熱を持つ光

安息の光

　ドアを開けると、穏やかな光が身体中に差し込んできた。暖かい、不思議な程に暖かさを感じる。や

はりこの感覚は勘違いじゃ無かった。この光は、明らかに僕らの太陽である、あの照明の光とは違って

いる。

「んーーーーーーーーッ」

　背伸びをしてみる。これがまた気持ちが良かった。身体中の細胞全てが喜びに震えている、そんな感

じだ。僕はしばらくこの初めての感覚に酔った。

「何してんのさ」

　しかし、そんな僕の至福の一時もリムの一言で水泡へと帰した。そりゃあ、彼女にしてみれば珍しく

も何ともない光何だろうけど。でも、この光って本当に何の光何だろうか。

「ねえ、リム」

「何よ」

「これって何の光？」

「そんな事、知らない」

「へ？」

　素っ気無く答えるリムに、思わず目が点になる僕。

「知らないって・・・・・それはどういう・・・・」

「誰も確かめた事が無いからね。ただ、ボク達が此処に住む前から明るかったね」

「そうなのか・・・」

　改めて空を仰ぎ見る。僕らのとこと違って剥き出しの洞天井が淡い光に包まれている。まるで洞窟自

体が光り輝いているような、それでいて光苔とかとは違う圧倒的にも思える質量の確かな光が。

「んー、確かめてみたいって思わないかな？」

「何を？」

「いや、それならいい」

　今度は周囲を見渡してみる。

　リム達の住居がぽつぽつとあるだけで、他には何も無い。ただ、だだっ広くて抜けるような空間だけ

があった。

「ねえ、そう言えばあのスープの材料って何かな」

「材料？そんなの知らない」

「へ？」

「行商人が来て、そこからボクは買ってるのさ。だからあれが何なのかとかは知らない。料理の仕方も

行商人から教わっただけ」

「へえ・・・」

　どうやら、この先かどうかは解らないけど。まだまだ他にも人間は何処かで生きているらしい。もし

かしたら、その行商の人達こそが以前に旅立った人達なのかも知れない。或いは、本当に地底人なのか

も・・・・。

「リムは行商の人達が何処から来るのか知らないのかな」

「知らない。ボクはそんなに遠出しないから」

「そっか・・・あれ？」

　何だかだんだん明かりが落ちているような気がする。ここにも夜って感覚があるのかな。

「暗くなるね。戻ろう」

　リムは住居へと踵を返して行く。

　戻ろうと言う事は、僕もまたお邪魔して良いって事なんだろうけど。ちょっと動揺するかな、やっぱ

り・・・。まあ、他に行くとこも無いし。と言う訳で、僕もリムの後を追った。

　結局解った事は、何も解らないと言う当たり前の事だけだった。

　そしてリムの村はひっそりと暮れて行く。

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