時流を感じて

繰り返しの明減

　小さな丸窓から光が差し頬を照らす。僕はその眩しさで目が覚めた。

　欠伸と背伸びを一つずつしてその丸窓から覗くと、辺りはすっかり明るくなっていた。あの暖かい光

に包まれている。ここは自動で昼夜が変わるのだろうか。

　昨日は遅くまでリムと話（と言うよりは僕が質問しているだけ）をし、それから彼女の住居に泊めて

もらったのだ。ただ、彼女は眠るときには何処かに隠れたのか、何処にも見当たらなかった。それが僕

を警戒してなのか、それともそう言う寝方なのかは解らないけど。

　そして今も僕は一人だった。視界をくるくる回しても、そこに誰も映らない。

「おはよう」

「うわッ！？」

　いきなりの声に驚いて、慌ててそちらを振り返ると。リムがぼんやりと立っていた。昨日のままの姿

で。こんな時にも、彼女達には入浴とかそう言う習慣が無いのだろうか、とか変な疑問もしっかりと浮

かんでくるのだから、人間の頭ってのはおかしなもんだ。

「何？朝から大声だして」

「い、いや何でも無い・・・」

　リムは気にした様子も無く、昨日いただいたのと同じようなスープを何処からか出してくれた。良い

匂いが幸せな気分にしてくれ、それと共に僕のお腹も歓喜の雄叫びを上げた。

「じゃあ、食べましょ」

「うん」

　見た目は同じスープでも、味は少し変わっていた。飽きないように気を使っているらしい。と言う事

はそれだけ食材も調味料も豊富と言う事なのだろうか。苔か油ぎった黒羽か茶羽しかいない僕らから見

ればまるで別世界だ。

　今日のスープも美味い。材料は相変わらず解らなかったけれど。

「それで？」

「何、リム？」

「だから今日はこれからどうするのさ」

「ああ、そう言う事。・・・・んー、そうだなあ・・・」

　そう聞かれても、僕には何の考えも無いし、浮かばなかった。だいたい、その質問は僕がする方なの

では無いだろうか。土地鑑があるのはリムの方なのだし。

　取り合えず、しばらくスープを飲みながら考えていたけど。結局何の答えも見出せなかった。

「何よ、解んないの？・・・じゃあしょうがないね」

　だけど、そう言ったリムは何故だか少しだけ嬉しそうに思えた。そして彼女は少し考えた後。

「じゃあ暫くはここに居ていいから」

　と言ってくれた。やはり案外良い奴なのかも知れない。

　ただ、ここでのんびり暮らして行くだけなのも悪い気がするので。

「んー、リムは行商人から料理とか習ったんだよね」

「そう」

「その行商人は何時来るとか解る？」

「ええ、大体は」

「そっか、なら次来る時は一緒に連れて行ってくれないか」

「良いよ」

「ありがとう」

　とにかくその行商人とやらに会って見ることにした。多分、その人が一番色んな事に詳しいだろうか

ら。

　そして行商人が来るまでは、リムの言葉に甘えさせていただく事にしたのだった。

　外を見ると、起きた時よりももっと明るくなっているような気がした。ここでは時間の流れがこうい

う風に肌で感じる事が出来るみたいだ。それが僕にはとても不思議だった。でも、とても心地良い感じ

がする。

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