退くよりも進んで砕け

進むべき道は・・・

　一夜明け、ようやく気を取り直した僕はふと思案してみた。

　このままここでのんびり暮らすのも悪くは無いが、それではこの旅をしようとした意味が無くなって

しまう。それにいつまでもリムにお世話になっている訳にもいかない。良い堀場を得なければ、僕らの

生活は成り立たないのだから。

　僕は相変わらず何するでも無く、暇そうにしているリムに聞いてみる事にした。この辺りに良い堀場

は無いのかと。

「知らない」

　しかし期待も虚しく。返って来たのはそんな素っ気無い、聞き慣れた言葉だった。だががっくりと項

垂れる僕を見て、彼女も何か思う所があったのか。珍しくこの後に言葉を繋ぐ。

「ボクは解らないけど、行商人なら何か知ってるかもだね」

「行商人？・・・・でも、どうやって会うんだ。またここに来るの？」

「ううん、次のボクの番はまだ先。だけど行商人達の村に行けば・・・」

「行商人村？？」

　驚くべき事に、いや考えてみればあのずんぐりむっくりも生活している訳で、住処があってもおかし

くは無かった。でも、村って・・・・あんなのがまだわんさか居るって事かな。それはちょっと不気味

過ぎる・・・。しかし、もう背に腹はかえられない。

「解った、何処へ行けば良いんだ、リム」

「この村のずっと奥の方だと思う。あの光が差してくる方だよ」

「よし。じゃあ僕は行って来る」

「ええ、頑張って行って来なさいな」

　そうして僕はリムに見送られ。何度目かの旅路についたのだった。

　少し期待していたのだけど、リムは同行してくれなかった。まあ、普通はそうなんだろうけど。どう

も彼女はこの村から、あまり遠出したくは無い様子だ。彼女なりに何か理由があるのかも知れない。で

も彼女なら何も無いのかも知れない。

　とにかくも、こうして一人旅となってしまったのだった。レットとロッコルは今頃どうしているのだ

ろうか。彼らも進んでいるのか、それとももう引き返してしまったのか・・・。あんな二人だけど、一

緒に仕事をしていれば愛着も湧いたり湧かなかったりする。それにやはり一人は心細い。

「しかし、本当にこっちに居るのかなあ」

　しかも行商人の村とやらまでの道がまったく解らないときてる。とにかくもこの光差す、明るい方へ

向かって歩いて行くより他に無い。昨日無理矢理でも話しに割り込んで、何か聞いていればと後悔する

が、そんな事は当然何の意味もなさない。

「まあ、明るいだけマシかな」

　暖かい光は優しく身を包んでくれる。これだけは救いだ。この光は凄く気分が良い。

　幸い、ずんどこ進んで行っても洞路は変わらず一本道で迷う事は無さそうだった。静かに光に満たさ

れている。何処までも何処までも。

「ふうふい、いったい何処まで続くんだか」

　出発してからかなりの時間が経っているはずだけど、全然先が見えない。しかも同じような一本道が

続くので、尚更気持ちが萎えていく。この洞路は世界の果てまで無限に続いているようにも思える。果

たして僕は、何処かに辿り着けるのだろうか・・・・。

　そんな疑問が鎌首を上げ、摂り付かれそうになった時。ふと懐かしい響きが聴こえて来た。

　そう、シャカシャカ、シャカシャカと。

　とうとう僕は幻聴が聴こえ始めたのだろうか・・・。そうしてぐったりと倒れ込みそうになった時、

それを裏切るように目にもしっかり飛び込んで来たのだった。

　あの目立つボロ衣の姿が。

　僕はその姿に導かれるように、そのボロ衣へとしっかりと踏み出して行った。導かれるにしては、嫌

な姿ではあったけれど・・・。　

　僕は後世・・・、ボロ衣に導かれた男として名を残すのだろうか・・・。

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