救援、辿り着いた地で

導く姿を

　僕を導くボロ衣人は僕と同じ速度でシャカシャカし続け、まったく追い付く様子が見えなかった。や

はり幻覚と幻聴のお買い得パックなのかと、気持ちが萎えそうになる。

「ま、待ってくれ・・・」

　僕はか細くなった声を懸命に張り上げた。

　するとそのボロ衣人はあっさりと止まってくれた。蜃気楼でも無かったと僕はほっと一息をつく。そ

れにしてもボロ衣人達は誰もがこう素直なのだろうか。

　そして僕はボロ衣人へと歩いて行く。

　その正体と言うか、そのボロ衣人が誰かは何となく予想はついていた。懐かしく、しかもリムとは違

うシャカ音・・、となればもう一人しかいなかった。

「リル・・・だよね？」

「・・・そう、私はリル」

　正解だった。しかし彼女達は何故に皆同じ姿なのだろう。彼女達から見れば、きちんと見分けがつく

のだろうか。

　何にしても一度対面しただけとは言え、見知った人が一緒に居てくれるのは心強い。何だか元気が湧

いて来た。

「僕を・・・案内してくれるの？」

「ええ、困ってるみたいだから」

「ありがとう」

　リルは僕が近付くのを待って、またゆっくりとシャカシャカし始める。その度にボロ衣が風に揺れ、

僕を風雅な気分にさせた。天然洞にボロ衣は良く映える。もしかしたら、その格好の理由はそこにある

のかも知れない。

　しかし家の前での出会いといい、リルはリムと違って行動派のようだ。

　そして沈黙が戻り、僕はふと思い出した事を尋ねてみる事にした。

「リル」

「何？」

「探し物は見付かった？」

「まだ解らない」

「そっか・・・」

　水を飲み、ただリルに付いて行く。景色は変わらず、先も見えない。でも、今はもう不安は無い。い

つもどんな時でも、誰か共にする者が居れば、それは本当に励みになるのだから。

　暖かい光が身体を包む。その強さだけが、僕らがそこにシャカみ寄っている証。

　静けさが光と混じり、僕らはただ黙って歩き続けた。

　そしてどれくらい進んだだろうか。ふとリルがシャカみを止める。

「どうかした？」

「・・・・着いた。あそこ」

　リルが指差す方には確かに洞以外の何かが見えた。耳を澄ませば、微かに何かも聴こえているような

気がする。

「じゃあ」

　リルはそう一言ぼそりと呟くと、身を翻し、圧倒的なスピードでシャカり去って行ったのだった。

　相変わらず、迅い。そして心地良いシャカり音でもあった。

「ありがとう・・・リル」

　僕は彼女の去った方へ、静かに頭を下げ。ゆっくりと踵を返し、目的の場所へと再び歩き始めたのだ

った。

　辺りは少しずつ暗くなり始めている。明るい内に辿り着けたのは本当にありがたかった。見知らぬ洞

内での野宿は、本当に心細いものなのだから。

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