オゾマシイ物事

行商人？の村？

　目的の地への道を進むと、だんだんと聴こえていたものが鮮明になって行った。その内容は良く解ら

ないモノだらけだったけど、ぽつぽつと話し声が混じっている事を思うと。どうやら僕は到着出来たよ

うだった。

　何とかニー、何とかニーと言う語尾だけが異様に頭に響く。これだけは嫌でも間違えようが無かった。

「何か、見るのも怖い気がするけど・・」

　話し声の内容までうっすら聞き取れる距離にまで近付くと、今更畏れの感情が浮き上がって来た。そ

れをぷかりぷかりと浮かべたまま、洞壁の切れ目からこっそりと奥を覗き込む。

「いやいや、大分儲かっただがニー」

「わしの方も負けてはおらんごニー。たくさん売って来たんごニー」

「最近腰が痛いぎニー。そろそろ引退ぎニー」

「まだまだだげニー。頑張ってもらわないかんげニー」

　そこには爽やかに談笑するずんぐりむっくり行商人の群れの姿が・・・。

「うッ・・・」

　思わず僕は後退ってしまった。何しろ、一人？や二人？では無いのだ。辺りには埋め尽くすように、

無数のずんぐりむっくりの姿が・・・・。

　戦慄、そんな単語を脳裏に浮かべつつも、僕はそれでもその場へ踏み入れる事を覚悟する。

　そして今度は堂々と歩み入り、そして目を逸らさずに直視する。

「あれ？」

　するとどうだろう・・。あれほど居たずんぐりむっくりが消えており、今はただ一人？だけがぽっつ

りとこちらを向いて立っていた。そして彼？はぴょっこりとこちらに近付き。

「遠い所ようこそだがニー。何か入用の品があるのだがニー？」

　そう言って愛想良く出迎えてくれた。

「えーっと・・・、他の方々は・・・」

「ああ、兄弟達は仕事に出かけたがニー。用事でもあるだがニー？」

「いや、別に・・・・」

　全員兄弟なのか・・・・。僕は再び戦慄を覚えずにいられなかった。

「まあまあ、こちらに来てくれだがニー。ゆっくりしてくと良いのだがニー」

　ずんぐりむっくりはぴょこぴょこと歩いて行く。

　僕はぼんやりとした気分でそれに従った。とにかく衝撃が強過ぎて、頭が上手く回らなくなってる。

　そして僕は一つの大きな家に案内された。それはリムの家の大型版と言う外見だったが、言われるま

まに中に入ると、中はまったく違った景観だった。

　到る所に物が溢れ、堀道具から日用品まで実に様々。しかもそれぞれきっちりと整理されていて、そ

れがまた実に気味が悪かった。ちぐはぐな物が理路整然としている姿は何とも言えず気持ちが悪い。

　何でも整理整頓されていれば良いってものでも無いなと、僕は深く心に刻んだのだった。

「取り合えず奥へ上がってくれだがニー」

　ずんぐりむっくりは更に奥へと進み、ゆったりとした空間の広間へと案内してくれた。

「まま、これでも飲むだがニー」

　そして液体の入った器を勧めてくれた。

「これはこれはご丁寧に」

　ごくりと飲むと、生温い液体がにょろにょろと喉を通過して行く。これまた非常に気持ちが悪かった。

「・・・・・・・・」

「もう一杯どうだがニー？」

「いえ、結構です」

　味だけは良かったのが幸いした。これで不味かったら、僕は間違い無くここで激しく嘔吐していただ

ろう。後は後味が以外にさっぱりしているのが不思議だった。

　この飲み物に関しての話題だけは避けよう。そして僕はこう心に誓ったのだった。

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