不可思議奇談

談話？？

　行商人？はニーガと名乗った。これからは彼？をニーガと呼称する事にする。

　僕は不自然にすっきりした喉を気にしながら、ニーガに問い掛けを試みてみた。

「この辺に良い堀場は無いですか」

　するとニーガは何故だかきっちりと座り直し。

「これはこれは、商売敵の登場だがニー」

　と油断無い視線を張り巡らせているように、フードから覗く輝きが一層増したような気がする。この

輝きらしきものが、おそらくはニーガの目なのだろう、多分。いや、もしこれが鼻の穴だったりしたら

どうしよう・・・。

　まてまて、それ以前に人間と同じ身体の作りをしているのかすら疑問だ。もしこれが臀部の輝きとか

だったら、僕は一生救われないな・・。そんな事が、ふと身に染みた。

「大丈夫だがニー。例え商売敵でも、いきなりはとって喰ったりはしないだがニー。きちんとスパイス

効かせるアルヨ」

　僕のしばしの沈黙を、どうやらニーガは警戒の姿勢ととったらしい。・・・・・・って結局食べるん

かいな！！

「えっと、いや、んーと、商売敵ってどういう事ですか？」

　心の葛藤を億尾にも出さず、僕は冷静を装いきれない態で、辛うじてそう言霊を吐き出してみた。

「知らずに言ってたのだがニー？わしらは食材から堀まで、一切を取り仕切っておるのだがニー。残念

だがニー、この辺は全てわしらの縄張りだがニー」

「げッ！！本当ですか？」

「全て本当だがニー。諦めるだがニー」

　折角此処まで苦労してやって来たのに。まさか何の実りも無かろうとは・・・・、これは予想もして

無かった。

　そう思うと、張り詰めていたものが切れたように、今までの全てのモノが両肩にどっしりと覆い被さ

って来た。耐え切れず、その場に塞がり込む。

「おやおや、大丈夫だがニー？何か飲むだがニー？」

「いえ、結構です・・・」

　ニーガもこんな形でも結構優しいらしく、心配そうにもきもきと気遣ってくれた。しかし、無駄足と

言うダメージは・・・・あまりにも大き過ぎた。

　ビッコルさんや、レット、ロッコルの哀しむ顔が思い浮かんでは消える・・。切ない、切ない、とて

も切な過ぎる。

　するとあまりの僕の姿を見かねたのか、ニーガが自信無さそうな声で呟いた。

「堀場・・・あるにはあるかも知れないがニー・・・」

「本当ですかッ！？」

「むはッ！？？ほ、本当は本当・・・かも知れないが二ー」

　ニーガは驚いたように、フードから覗く輝きを瞬かせていながらも、そう言ってくれた。その声にも

言葉にも自信の欠片も感じられなかったが、それでも良い。今までの苦労が無駄足にならない可能性が

あるのなら、僕は何にでも縋ってやる。

「実はわしらもこの村より奥へは行かないのだがニー。だからこの奥は縄張り外、しかも手付かずだが

ニー。奥がどうなっているかは知らないのだがニー。可能性があると言えばあるだがニー」

　ニーガそう歌うようにそう言った。ならば、何がどうなろうと。例え危険な目にあったとしても、僕

の取るべき道はただ一つ。

「それなら、僕は行きます」

「でも、何があるのか解らないだがニー」

「構いません」

「そこまで言うなら、止めないがニー。気をつけて行くと良いがニー」

　僕の決意を汲み取ってくれたのか、ニーガはそれ以上止めようとはしなかった。それどころか。

「なら、好きなモノを持ってくと良いのだがニー」

　そう言って、水や食料をにこやかに（私見ですが）渡してくれた。

「心配しないでいいがニー。代金は付けとくだがニー」

　しかし流石は商人？、しっかりしたものだった。

　ともかくも僕は更なる旅立ちを決意したのである。

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