嘆きの道々

奥から奥へ

　行商人の村から更に奥へと踏み入れると、そこにはやはり飾り気の無い自然洞が広がっていた。

　しかしこの広範囲に渡って、果たして本当に自然にこんな洞窟が出来たのだろうか。

　改めて考えてみると、如何にも不思議でどうしようも無かったりする。思えば、こんなに舗装でもさ

れたかのように綺麗に洞窟が出来るものだろうか。

　まあ、どちらにしても僕は進むしか無い。もうここまで来たら、半分以上は意地だった。

「しかし何処まで続くんだろう・・・」

　延々と変わり映えの無い洞肌が続くと、どうしても距離の感覚が狂ってしまいそうになる。もしかし

たら、本当の自分はここで足踏みをしていて、まったく進んではいないのでは無いかと・・・。

　今ならレースをすれば尺取虫にも負ける自信があった。正に確固たる揺ぎ無き自信。ただ、それは何

の役にも立たず、まったく意味の無いモノ。

「虚しい・・・」

　一つ縋れるモノがあるとすれば。この身体を包む暖かい光だった。

　それだけは少しずつだけども、確かに強まっている。そしてそれは同時に、自分が確かに進んでいる

証明でもあるのだから。

　今の僕はニーガから聞いた可能性を信じ、ただただこの光へ向けて歩き続けなければならない。

「・・・・休憩しよ」

　その場にどっかと座り込み、ニーガからもらった水筒を開け、ぐいっとあおる。

「キモッ！！？」

　どろりとぬめぬめした喉越し・・・・そして生暖かく、人肌の温もり。

　しかし味は良く、何故かとてもすっきり出来る。

「・・・・・・・」

　僕はとても複雑な気分で、しばらくその水筒を眺めていた。

「この液体には・・・・真理があるとでも言うのだろうか・・・・」

　そしてニーガにもらった食料の方にも、がぜん不安が盛り上がってきたのだった。

　多分味は問題無いのだろうけども・・・。それだけではどうにも釈然と出来ないモノが、深く僕の心

に残ったようだった。

　かと言って何がどうなる訳でも無く。

「・・・・・・」

　僕は彷徨える狼のように、ぽつぽつと歩みを再開させた。

　景観は変わらず。それは果てしなく続いているようにも思える。そこに終わりはあるのだろうか、そ

して僕は一体何を目指しているのだろうか。

　試しに側の洞壁に近寄り、ちまちまと掘ってみる事にした。

　愛用のツルハシを掲げ、恨みにも似たモノを込めて振り下ろす。上げては下ろし、上げては下ろす。

「えーんやこら、やっほっほーい。えーんやこら、やっほっほーい」

　延々と続く洞内に、その声は良く響いた。それだけにとても虚しいけども。

　それから暫し、これまた意地になって掘り続けた。岩盤は固いが、掘れない程では無く、作業は順調

に進んだ。だがしかし、その成果と言えば・・・・。

「岩と土塊ばかりじゃないの・・・・はふう・・・」

　この辺りは誰もまだ掘っておらず、宝の山だったはずなのだが。その幻想と言うか願望は脆くも崩れ

去ってしまった。

「そりゃ、何処掘っても何かしら出てくるなら、初めから苦労しないんだけどね・・・・」

　後に残った物と言えば、疲労と掘り出して小山になった土岩の群れ。

「こんなとこまで来て何やってるんだろう・・・」

　リムとのんびり暮らしてれば良かったかもと。この日、僕は少しだけ。いや、かなり今の自分を後悔

した・・・カモシレナイ。

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