満ちるモノしかれど満たされぬ

光の渦中

　当ても無く歩き続けた。

　ただ、光だけが強まり続け。しかし、景色はいつまでも変わらない。

　光は終わりを囁いてくれる。でも、やっぱり洞道は続く。このまま延々と進み続けたのなら、ひょっ

として自分は光に取り込まれてしまうのではないか。そんな場違いな思いまで浮かんできた。僕は、疲

れているのかも知れない。

　只一人、孤独な歩みがこんなにも大変だとは思わなかった。

「失策なりけり・・・」

　無謀。もうその言葉以外に今の自分を表すモノがあるだろうか。

　しかし、どちらにしても。もう帰りの道も解らないのである。進むしか無い、他に道はあっても考え

られない。その思いが意地となり決意となって今の自分を動かしている。

　そして水筒の中身を口に流し込むのだ。

「キモッ！！？」

　ねっとりとした喉越し、何かがうごうごと通り抜ける食感はどうしても慣れなかった。いや、慣れた

く無いのが本心だろうか。

　しかしこれもどうしようもない。他に水分を摂れるモノが無いのだから。

　洞内に満ちる光は、もう洞自体が発光しているのでは無いかとすら思うぐらい。とてもとてもありふ

れたものになりつつある。一つにはそれで助かっているのかも知れない。

　この光は、どんなに窮地に陥れられたとしても、変わらず心地良いに違い無い。

「はあひいふう」

　でも今はそんな事よりも、ただただ疲れた・・・。少し休もうか。

　その辺にぐったりと腰を下ろした。

　そして今度は変な塊を頬張る事にする。これもニーガからもらったものだ。食料だと言っていたけど、

一体何なのか、そして何で出来ているのかも解らない。そう言う得たいの知れないものだった。つまり

は水筒の中身と一緒。

　これも他に食べ物が無いのだから、これを食べる以外に僕には選択肢が無かった。

　僕の尊厳を守る為に、これだけは強調しておこうと思う。

「これしか無かったんだ！！！」

　叫んでも応えてくれる人も無く、残響がとても虚しい。

「まあいいや、喰お」

　がぶりと齧り付く。

「ぬお！！？」

　これは何故かさっくりさくさくとしていた。この小気味良いサクサク感が、今は余計に怖い。果たし

てこれは植物だろうか、動物なのだろうか・・・。解らない。でも、サクサクしてる。そしてやはり味

は良かった。

　でもリムのスープには及ばないと思う。リムスープがもう懐かしくなっている自分が少しおかしかっ

た。

「んー」

　気がつくと、辺りがうっすら暗がり始めている。仕方が無いので、今日はここで野宿する事にした。

明日はせめて良い事がありますように。

　目を閉じるとすぐに眠りが訪れた。でも一人で寝るのも少しだけ寂しく思えた今日この頃でした。

BACK・ EXIT・ NEXT

　