そして再会　導きの黒マント

亜空間

　目を開くと、すっかり辺りは明るくなっていて。光が幾条も目に飛び込んで来た。

　しかし不思議とそう眩しくも無く。言ってみれば目に優しい光だった。何だか体調も良いように感じ

る。思えばこの暖かい光と出会ってから、身体の調子が快調になっているような気がする。

「ふあああああ」

　欠伸を一つ。

「さて、行きますか」

　ゆっくり眠ったおかげなのか、身体も心の疲れも取れたように。これまた不思議とすっきりした感じ

だった。

　そして立ち上がり、またてこてこと歩み始めた。一本道を延々と歩くのは非常に精神衛生上思わしく

無いけども、迷わずに進めると言う安心感はとても良いものだ。

　光が更に強まって行く。一体何処まで輝きが増すのか、見当も付かない。よほど大きな光源があるに

違い無い。光苔の密集地帯でもあるのだろうか・・・・。でも、こう苔が集まって苔塊になってたら、

嫌だなあ・・。青々してる、青々してるなんて・・・・耐えられないッ！

「んー、でも本当に何処まで続いて・・・・・おんや？？」

　光の先に影のような黒っぽいものが見える。まるで証明にたかるゴキブリのような・・・・、うう気

持ち悪い・・。でも本当にゴキブリだったらどうしよう・・・。

　そんな考えが頭を巡り、暫く足踏みしていたけれど。もう、ここまで来たら行くしか無い。そんな自

己強迫観念を逆手にとり、一勇足を踏み出した。そう、進むしか無いのだから。

「光にゴキブリって・・・ハマり過ぎてて怖いなあ・・・」

　その黒点は当たり前だけど、近付くにつれて徐々に巨大化していく。遠くからだと解らなかったけれ

ど、もしかしたら僕と同サイズはあるかも知れない・・・。人間大ゴキブリ・・・・身も毛も弥立つ体

験になるのだろう・・・。

　しかしそれは予想に反して、単なる黒衣人のようだった。更に近付いてみると、手足は四本で黒羽も

無さそうだった。しかし微妙に油ぎっているようにも見える。まだまだ安心出来ないな、これは。

「・・・・・・」

　その黒衣人はどうやら僕をずっと待っているようだった。視点はどうかは知らないけれど、少なくと

も顔だけはこちらを向いている。

「なら急がないと」

　僕は速度を上げた。そう、待っているのなら急いであげないといけない。

　そしてかなりの距離を駆け続け、黒衣人の前に立った。するとまたしても意外な事実が判明してしま

たのだ。何とその人は黒衣人では無く、黒マント人だったのだ。全身黒尽くめでも無く、ただ黒マント

に身を包んでいるだけだったのだ。こりは吃驚。

「えーと、あのー、そのー」

　そして取り合えず、何となく声をかけてみる。

「・・・遅かったのね」

　聴こえて来たのは、ふと懐かしき声。もしやこの声は・・・・。

「リル！？？」

「そう、私はリル」

　マントの下を見せてはくれなかったが（セクハラ？）、その声と喋り方は正しくリルその人だった。

本人もそう言っているのだから、そうに違い無い。同名のそっくりさんと言う可能性は、面倒なのでナ

チュラルに無視する事にする。

「何で君が？」

「待ってたの。ただそれだけ。・・・・行くわよ」

　リルは相変わらず言葉少なにそこそこに、ぽてぽてと歩き始めた。

　慌てて僕も付いて行く。数多無数の疑問質問が脳裏を掠めて消える。でも今はただ進むのみ。

「もうすぐ辿り着けるから」

　彼女はただそれだけを言った。もしかしたら、僕を安心させようと、彼女なりの気遣いなのかも知れ

ない。でも、ただ僕は、ぼんやりとだけ進んでいた。

　そして光の先に、閃光のカーテンが見える。綺麗な光に僕は数度、目を瞬かせたのだった。

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