二度目の出会い

不屈の探し人

　今日は仕事に行かず、寝床でこっそりしている事にした。

　レットから聞いたあのボロ衣人の事が気になったからだ。何を探しているのか解らないけど、我が家

の前で会ったのも何かの縁、ここはコミュニケーションをとってみようとそう言う訳です。

「しかし寝たふりも疲れるなあ・・」

　確かに身体が痛い。ごろごろしても痛い。慣れても痛い。

　でも、他にどうしようも無いのでこのまま待つ事にした。

　そうしていると、何処からか、かさかさと言う物音が聴こえて来た気がして。ゆっくりと上半身だけ

起き上がらせて見た。

　すると確かに、前と同じくボロボロの服を着た人がうつ伏せに寝そべっている姿がそこに在った。そ

してこれも同じくしゃかしゃかと懸命に虫のように移動している。そして時折、何かを掴んでは照明の

光に確かめるように翳しては捨てていた。

「んー、さてどうしようか」

　ボロ衣人はこちらに気付いていないようだ。しかしまた不用意に声をかけてみても逃げられるだけな

のだろう。何故逃げるのか解らないけれど、・・・・恥ずかしがり屋さんなのかな。

　ともかく、しばらくここで眺めてみる事にする。何より、声をかけてまたあの驚愕の表情を見るのが

怖かった、と言う事もある。

　しかし当然こうやって居ても、事態は何も進行しない。観察をしていても、一向に変化が感じられ無

いのでつまらないし。

　しょうが無いので走る事にしました。

「！！！！？？？」

　駆け寄る僕に驚いたボロ衣人は、勿論あのこちらが逆に引く程の驚愕にその表情を歪め、物凄い勢い

で後ろ向きに這い去って行きます。

　僕も勿論走り続け。つまりはこう二人で睨めっこするような格好で走り続けると言う、嘘のような本

当の話な状態になる訳で。当然、あちらさんは吃驚の表情を浮かべ続けている事は、疑いようの無い事

実だろうと思う。

「！！！！！！！！」

　このままでは不利だと悟ったのか。ボロ衣人は無理矢理、亜高速（体感速度）の中でいきなり反転を

試みたらしく。こうその髪を風に逆らわせながら、私は逆境に負けない強い人間なのよ的雰囲気を漂わ

せ、頭をぐいっと降り抜きました。

　しかしそれが結果としてそのボロ衣人の致命傷となりました。

　視界が横に逸れた所為なのか、ボロ衣人は足を、いや手を、ああもうどっちでも言いやを滑らして、

見事な程ウコッケイに転んだのです。

　ズ座座座と言う音響きを乗せて、それは乾いた地面に良く滑りながらもようやく止まり。そして静け

さが場を支配した。

　僕はナチュラルに停止し、しかしそれ以後どうしたものやらと眺めていると。偶然にもそのボロ衣人

と視線がばっちり合い、その不思議な程澄んだ瞳に何も言えなくなった。その瞳に映る、諦めの色が逆

に僕の口をがしっと閉じさせたようで。

「・・・・・・・」

　それはあちらも同じらしく、その綺麗な目をパチクリさせたまま伏した状態のまま、静かにこちらを

見てる。

「あー、えっと・・・・大丈夫？」

　ようやく僕は手を差し出す事が出来たのだった。

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