なせば為す

行き詰まり

　リルとの出会いから数日。余裕の無くなった僕は必至で堀続け、あれ以来彼女の姿を見ていない。

　僕が真面目に仕事しているので、レットの奴もストーキングする必要も無く。結果としてあれ以来、

僕からすれば彼女は消息不明と言う事になっている。

　そうなると、やっぱり何だか気にかかって仕方が無い。けれど最近は堀の稼ぎが悪くて、どうにも余

裕も出来そうに無く。あの石炭以来、目ぼしい物が出て来ていない。一緒に掘っているビッコルさんも

そうで、家庭持ちの彼としては結構切実だろうと思う。

　かと言って一生懸命やれば何とかなると言うモノでもなく。

「うーん、今日も少ないよね。これはもう、厳しいのよね」

　ビッコルさんは今日の稼ぎを見て嘆いている。

「んー、もっと極端に場所を変えないと駄目なのね、これは」

「でも、他の良さそうなとこは皆先約が居ますよ」

「んー、そうなんだよね」

　もうこんな風に途方に暮れざるを得ない状況になっていた。

　場所が空いてて掘れそうな所は粗方掘り尽くし、流石のビッコルさんにも最早他に当ても無いそうだ。

　後は他の親方的立場の方に、場所を少しでも譲ってくれないかと頼みに行かせたレットだけが頼み。

しかし最近は何処も堀の成果が思わしくないと言う話だから、さて場所を提供してもらえるかどうか。

「お、レットが戻って来たみたいだね」

　見ると、確かにあの独特の走り方をして、しかも凄いスピードでこちらに来る悪釜の姿を発見した。

レットは見付け易くてしかもしぶといので、こういう時には役に立つ。いや、こういう時にしか役に立

たないと辛らつに言うべきなのやら。

「どうだった、レット？」

　しかしそう言った僕の期待も虚しく。

「無理だったよ・・・、何て美しく無いんだろう。私の美貌の前にはひれ伏さなければ美しく無いと言

うのに・・・・」

　どうやら彼奴の嘆きは僕らとは別の所らしい。　

　その時、おそらく初めから期待もしていなかったであろうビッコルさんは、レットを明らかに無視し

ながら決心したようにこう呟いた。

「ここは遠出してみよう」

「ええッ！！？」

「いやいや、もう新ポイントを探索するしか手が無いのよね」

　確かにこの広大な地下世界、探せばまだまだ腐る程資源は眠っているだろうけど。

「でも危険過ぎますよ」

　僕はやはりしり込みしてしまう。

　この地下世界、まだまだ未知の生物がたくさん居るだろうし、間違えて水脈でも掘り当てた日には全

洞が水で埋まってしまうかも知れない。他にもマグマ、ガス等脅威と危険には事欠かないのだ。

　まあ、回避する知恵と手段もあるのだけれど・・・・でも。

「リスクが大き過ぎですよ」

「ならどうするのよね、わしら一緒に飢え死にでもするのかね」

「それは・・・・」

「もう他に手が無いのよね。最善の策が無ければ、次善の策で行くしか無いのよね。希望は食えないん

だよね」

　そう言うとビッコルさんは片づけを終えて静かに立ち上がり。

「わしの経験と勘を信じるのよね」

　と告げてぴゅうっと帰宅して行った。ビッコルさんは決断も早ければ行動も速い。

　そして僕の選択肢も一つしか無かったのだった。　

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