輝くモノは

朱の明星

　凄まじい程のエネルギーを感知した。

　これほどの高エネルギー破は何度も経験した事は無い。地面どころか大気までぶすぶすと焦げ、沸騰

したかのようにグジュついている。大気が焦げる匂いなど想像すらした事が無かった。

　そしてあの歓喜の雄叫び。心から震えが来る。

「つくづく化物だの・・・・、黒い悪魔とは良く言ったもの」

　流石のドランクも凄惨な光景を目の当たりにして、呆けたようにしばし眺めていた。

　ただ本当に空恐ろしく思ったのは、あんな力を引き出せるゼロライムに対してだったのかも知れない。

レイウスすら上回り、イザリーに匹敵する魔力と言うのも強ち冗談でもなさそうだ。

「ま、味方で良かったわい。あんなのが二機も敵だったら、わしも裸で逃げ出すとこだの」

　そうして、機体を敵残機へと向ける。

「全機、敵残存部隊へ一斉射撃！！」

　その声に気を取り直した帝国機は再び射撃を開始した。強大なディアボロスの一撃に戦意を喪失しつ

つある敵機は、反応の遅い機体から順に撃破されていく。敵国の国力と資源を考えれば、これで致命的

な損害を与えた事になるだろう。

　流石に完全に己を取り戻したであろう敵部隊も、すでに数の上では脅威とは思えない。それでも、性

能差を差し引くと６対４で有利か？と言った所だろう。

「このまま全滅でもさせれば、有利に停戦を持ち掛けられるかも知れんの。だが、今更首脳部はそれを

許すまいの・・・・」

　戦争なんぞ、嫌な事だけだの・・・。と、ドランクは先ほどから溜息ばかり付いている自分を感じて

いた。

「なんなの、この衝撃は・・・・」

　水中戦用ウンディーネに乗り込みながら、マリエルは大地から機体越しに伝わる振動に身体中が悲鳴

を上げそうな、そんな痛みを必至に堪えていた。ビリビリと身体を震えが走るたびに、骨々が軋んでい

くようだ。

「これでも女だから身体は大事にしたいけど」

　気力で痛みを押し込めるように、気合を入れて叫ぶ。

「ウンディーネ・アクア、発進する！！」

　それにもう一つの力強い声が重なる。

「レグス様！？」

「マリエル様！？」

　急いで通信パネルを開くと、レグス少尉が難しい顔で見詰めていた。

「マリエル様、貴方は休んでいて下さい」

「私も行きます」

　一歩も譲れないようにマリエルも真っ直ぐにレグスの目を見詰める。

「解りました、ではサポートをお願いします」

「はい、ありがとうございます、レグス様」

　ちょっと困った顔のレグスに心の中で謝罪し、メインパネル越しに広がる戦場を真っ直ぐに見据える。

　通信パネルからレグスの落ち着いた声が流れる。

「戦況は不利ですが、戦力としてはまだ五分五分です。相手も疲れきっているはずですから、士気さえ

削げれば何とか撤退させる事が出来るかも知れません」

「はい、では狙いはあの赤い機体ですわね」

「ええ、その通りです。この機体では少し性能で負けていますが、私達二人でかかれば」

「ふふ、ではパートナーですわね。光栄ですわ」

　整備兵が下がり、ハッチが出撃可能点まで開ききる。

「では行きますよ、マリエル様！」

「はい！」

　二人同時にハッチから戦場へと飛び出す。

　戦況は再び変化の時を迎えるのか。

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