事後処理は早々に

暗躍は常に

「やはり帝国の勝利のようだな、アイン」

「そうだね、ミハイル。でも、共和国と北方にしては頑張った方かも知れないね」

　一部始終を事細かに見ていたらしく、見慣れぬ機体の中でメモにペンを走らせる青年が二人。高い山

頂から長望遠のモニターで見下ろしていた。

　システムを停止しているらしく、今は精霊力場も感じない。当然レーダーにも映らず、あの決戦の最

中に気付く者などいないだろう。

「ふふ、まあこれで白天使と黒悪魔の脅威は無くなる訳なのだから、我が国としては最良の結果に終わ

ったと言う所か」

「後は賢視がさっさと引っ込めば予定通りになるね」

　ミハイルと呼ばれた年上の男が黄色の機体。アインと呼ばれた男が紫の機体に乗っている。両機とも

デザインが帝国や連合のモノとまったく違う。だがディアボロスに少し似通っている所も見受けられた。

角張った悪魔のようなフォルム。

「ともかく我らが神が勝ったと言う事は喜ばしい事だ」

　ミハイルが皮肉に笑う。

「でも、僕らにとっては邪魔だね、あれは」

「そうだな、私達にとっては邪魔だな」

「なら、今ここで・・・」

「ふふ、焦る事は無いアイン。それにいつも言っているだろう」

「面倒事はごめんだ、だねミハイル」

「ふふ、そう言う事だ」

　そしてこの二機は帝国・連合両軍が帰還して行った後、人知れず後を追うようにこの場を去った。

　

「では、この二機は私が引き受けます」

　帝国に着いた後、ディアボロスと白天使は賢視に預けられる事となった。

　この二機の運搬等はアウグストゥスの選帝公が引き受け、レズナー参謀長とレズウェス第五機兵団長

が忙しそうに準備に追われている。

　ウィル左将軍は一人基地を奪還されたのを喜んでいる。その反面イザリー右将軍が奪回した事に少な

からず反感を覚えているようだ。イザリーの受難はこれからのようである。

「軍備増強、共和国北方掌握に力を入れよ」

　帝王カルサスはこう全軍に命じ、東の大国への警戒を怠らぬようにしている。戦力が激減した今、北

方の技術力を手に入れた事は帝国にとって不幸中の幸いなのかも知れない。北方のおかげで開発力や機

体性能だけで無く、生産力も大幅向上されるだろうと予想されている。

　そしてドランク、レイウスは続いて前線に配置される事となった。本人達は心底嫌そうな顔をしたも

のだが、彼らも皇帝の意志には逆らう事は出来ないようだ。彼らには機兵団長ではなく、前線指令の任

が与えられた。どちらかに大将軍の位を・・・と言う考えも皇帝にはあったようだが、二人とも流石に

それは辞したらしい。

　イザリーには新たに共和国と北方の統治が命じられた。彼女にも忙しい日々が続くだろう。

　白天使に乗っていたレグスは不思議な程怪我一つ無かったらしい。彼はマリエル達と共に帝国に仕え

る事となった。代わりに共和国のレクレリー元帥以下上級士官達は官位を剥奪され、軍刑務所へと連行。

一切の責任はそちらへと向けられた。

　レグス、マリエルともイザリー付きに命じられ、これから共に共和国・北方を復興させていくだろう。

お互いに苦い思い出があるものの、関係は概ね良好のようだ。戦争は戦争での事と割り切る事もある意

味大事な事と彼女達は思っている。　　

　こうして、連合側が帝国に吸収併合する形で終わる事となった。

　共和国・北方の国民達も大人しく従っているようで、後数十年もすれば昔話に変わるのかも知れない。

勿論、戦死者を出した家族は一生忘れる事は無いだろうが・・・。

　そして歴史は再び緩やかに過ぎていくように見えた・・・・。

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