説明台詞は疲れます

回顧する者

　賢視の住む塔にはアウグストゥスの選帝公、レズナー参謀長、そしてゼロライムの三人が同行した。

通行に不便な地に住んでいる為、運搬は機兵によって行われる。それでもあまりの難路の為にゼロライ

ムとレズナーは倒れそうな程疲労した。

　選帝公は不思議に息一つ乱さなかった、賢視と同じように。それを見てレズナーは驚きを通り越して

夢を見ているようにも思ったものだ。

　そしてこの書物が騒然と積まれた一室には賢視と選帝公だけが居る。ゼロライムとレズナーは今頃機

体内で休息を取っているはずだ。

「しかし操縦の腕はまったく衰えませんね。つくづく人間の恐ろしさを感じます」

「ふふ、そなたが言う事か。以前会った時と同じ姿で現れおって・・・」

「私の役目は１００年かそこらでは終わりませんからね。面倒な事を引き受けてしまったものです。ま、

おかげで面白いものも見れますが」

　賢視フェイアはゆっくりと息を吐いた。それ以外の何かも吐き出すように。

「しかし、あの機体はいったいどういうものなのか・・・。わしにも教えてくれまいか・・」

　フェイアは椅子に腰掛け、何気ない風で話始める。

「あれは神の移し身・・・と言うよりは残骸ですかね」

「残骸？」

「はい、創造神でもある月女神サリアと破壊神にしてすべての管理者太陽神ノヴァを真似た、いやもう

一度生み出そうとした結果出来たモノです」

「神を？人間自らが滅ぼした神をか・・・何故？」

　フェイアは再びゆっくりと息を吐く。

「歴史は後で思うほど単純でも無いのですよ。人間が神を滅ぼしたのは事実ですが、意味は違います。

結果滅ぼす事になっただけなのです。まあ、その辺は長くなりますからまたの機会に・・・。それで、

人間は神の管理を離れ自由と言うものを手に入れた代わりに加護と恩恵を失ってしまったのですが。そ

れを憂いた者達が代わりのモノを創ろうとしたのです。長い台詞ですね・・・喉が渇く」

　フェイアは自ら淹れていたお茶をすっと喉に流し込む。

「そこに大した意味も無かったのですが、何か寄りかかるものが人間には必要だと、そう思ったのです

よ。そこで魔動機の技術を利用し、そして竜王の身体を使って巨人を生み出した訳です。言わば、神の

身代わりを」

「竜王！？それも神と一緒に滅びたはずではないのか・・・・」

「ええ、ノヴァの手足となるよう創り出された竜族も共に滅びたのですが。あの二機の元となった黒竜

と白竜も・・・また他の竜とは一線を駕す存在だった訳です。そのニ竜は神の分身とも言える存在であ

ったと私は聞きました。ですから、神の身代わりには最適でもあった訳です」

「では・・・あの機体は・・・」

「ええ、生きています」

　手にしたカップを机へと戻し、フェイアは三度深く息を吐いた。

「そして、あのオリジンとルシファーがニ竜の心だと」

「心？」

「そうです。元々世界の運行に携わる精霊達の頂点に監視者たる竜族が居た訳ですから、それも別段不

思議な事でもありません。一種精霊はすべて竜王の魂だとも言ってましたから。自由と誇りを最も尊ぶ

種族ですから、神がいなくなったとは言えその使命を放棄するのは我慢がならなかったのでしょう」

「ふうむ・・・・」

　選帝公も深奥から吐息を吐き出した。見た目には解らぬまでも、やはり年老いた身体故、疲労も少な

からず蓄積されているのだろう。

「あの二機はただの精神的支柱としてのみの役目を果たすはずだったのですが・・・。やはり愚かな人

間、力に魅せられる人間は後を絶たないもので・・・・」

「封印されたと・・・・」

「はい、ですが結局こうなってしまった・・・。これも運命と言うものかも知れません。私としてはい

つまでも二神で眠らせてあげたかったのですが・・・。さて、長話になってしまいました。あのお二人

も待ち草臥れている事でしょう、行きましょうか」

「うむ・・・。しかし人間はいつまでも失敗しかしないとは・・・・、自由等は人の手に余るのかも知

れぬ・・・・」

　そしてディアボロスと白天使は再び賢視の手で封印された。賢視が居る限り、もう目覚める事は無い

だろう。だからおそらく永遠に・・・・。

「しかし、何故白天使を破壊する必要があったのだ・・・？」

「そこまでしなければ、一度起動した白天使サリアのシステムは止められないのですよ。そしてサリア

を止めるのは常にノヴァの役目なのです・・・」

「目覚めれば破壊し合う関係とは・・・・何と言う事だ・・・」

「ええ、そう死ぬまで嘆いていました。あれを創った我が父、ラムダ本人も・・・・」

　呟く言葉は淡々と。それ故に伝わる事もあるのだろう。その後、誰もが静かに埋もれていくニ神をた

だ眺めていた。あらゆる想いと共に・・・・。

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