変わらないモノもある

万感恒久

　日が直接照る事の無い淡い光に包まれている。

　見慣れた景色、子供の頃から変わらない。そしてきっとこの先もずっと変わる事は無いだろう。

　尖った山と木々が重なり、あるものは押し合い歪んだように絡み、あるものは重みでへし折られ。白

い景観とあいまって荒々しい印象を受ける。

　だがそれに反して柔らかく優しい、この地方独特の風が吹く。精霊力が上手く利用させているのだろ

うと言われているが、今ではそれを確かめる術も無い。

　ただ、彼女はこの風が好きだった。

「マリエル様、またここに居らしたのですね」

「ええ、この風が好きだもの・・・・」

　マリエルは生き残った部下達と共に北方へ戻って来ていた。

　機体の修復と部隊の立て直し、何よりきちんと帰らぬ人となった者達を安らかに埋葬する為に。

　あの戦いで実に部下の半数を失ってしまった事になる。共和国に協力した時から、その事は覚悟して

はいたが。それでも哀しくない訳では無い。何より自分の指揮で死なせてしまったと言う念がじわじわ

と心を支配していく。

「機体の修復と改良が全て終了したとの報告を受けました」

「そう・・・・、多分これが最後ね」

「はい・・・・」

　北方も共和国と同じく、あるだけの資源も資材も使い果たした。残っているのは僅かばかりの食料と

修復用に残した少しの資源のみだった。

　共和国よりの輸入も見込めない以上、勝てなければとてもこの冬は越せないだろう。

　戦争が長引いても駄目だろう。

「本当に部が悪い賭けね・・・・」

「はい、誰もこんな賭けは受けないでしょうね」

「ふふ、記念モノね私達」

「そうですね」

　二人はいつも通り軽やかに笑う。

　悲しみもするし、嘆きもする。時には涙も流れる事もある。けれども常に前を見る、それが生活に厳

しい山岳地帯で生き抜いてきた、彼女達の信念でもあった。

　死んだものより、生きるもの。

　生きる事に貪欲である事、それがここの掟なのだった。

　でもだからこそ笑える。それは大事な事だとマリエルは思っている。

「じゃあ、行きましょうか。最後に気合を入れなおさないといけないしね」

「あらあら、お手柔らかにお願いしますね」

　にこやかに談笑しながら静かに歩み出す。

　翻った銀髪に優しい光を宿しながら・・・。

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