思いは関係無く

精神交錯

　薄暗い常闇が彼には似合う。

　一人部屋に篭り、一つ一つ手順を踏んでいく。第一種精霊はその系統の精霊の長にして、神に次ぐ魔

力を与えられている。自然神とも言って良い。

　そんなモノを扱うのだから、慎重にも慎重になる必要がある。

「・・・・・・・・・」

　彼は無言で作業を続けている。

　今までもこれからもきっとそうなのだろう。

　両親から引き継いだ魔力と使命がある限り、いつまでもいつまでも永遠に・・・・。

　それが幸せかどうかは解らない。

　ただ、彼はそれが嫌いでは無かった。

　レイウスはふと目覚めた。

　そこは見慣れぬ殺風景な部屋、片隅に飾られた色鮮やかな花に眼が止まる。

　外は健やかな風。何事も無かったかのような穏やかな景色。

「私は・・・生きているのか？？」

　あの時、ディアボロスに飲み込まれて・・・・。

　良く解らないが、今は魔力が体中に満ち満ちているのを感じる。

「まだまだ、寝てる暇は無いと言う事か」

　頭がまだぼんやりと霞がかっていたが、しばらく後に病室に飛び込んで来た女性に抱き付かれた時、

何故かとても生きてる実感がした。

　ゼロライムは黒い悪魔の前に座ってじっとそれを眺めていた。

　今は眠っているように何も感じないが、あの時それは確かに意志ある者だった。

　この悪魔と同化したようなあの感覚。

「うーん、良く解らないけど助かったよ、ありがとう」

　ぺこりと頭を下げる。

　何にしても今自分が生きてここに居られるのはこの機体のおかげだと言うのは確かだったから。

「もしかしたら、こいつの本来の・・・・」

　しかし考えるのは止めた。余計な決め付けは百害あって一利無し。

「無愛想な奴だなあ」

　黒い悪魔は静かに佇むのみ。

　レグスは憂鬱だった。

　レクレリー元帥閣下より、直々に光精霊第一種オリジンの共感者に任命されたからだ。それは即ち、

白天使に乗れと言う事になる。いよいよ追い詰められた共和国には、もうその決断しか無かったのだろ

う。全ての資材と資金を擲って新型を開発、限界まで生産を繰り返したこの国はもうこの戦争に勝つよ

り他に生き延びる道は無いだろう。

　幸い北方の技術者が全面協力してくれたおかげで、良い機体に仕上がったと思える。彼らは初めから

腹を括っていたのだろう。

「しかし今度は私の番か」

　回収部隊の話によれば、ギリアム元大将は魔力を全て失い、今までの乗り手と同じようにコクピット

で朽ち果てていたのだと言う。

　良く解らないが、あの機体が一番危険な気がしている。

　あれを見ていると、心は安らいでくる。だがそれと同時にそれ以上の畏怖と嫌悪を覚える。

「しかし、こうなって尚まだ争うか・・・・」

　彼の率いていた部下達は今はもう数える程もいない。北方のマリエル様の部下達も機体もほとんどが

あの戦闘で失われてしまった。

　こんな戦争に一体何の意味があるのだろう。

　少なくとも人の命ほどの意味は無いだろうに。

「そして歴史は繰り返す・・・か。認めたくは無いものだな、自らの過ちは」

　オリジンとの契約を終わらせた今となっては、引き返すべくも無いが。

　全ての意志は是非に関わらず、一つの方向へ向い始める。

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