こういう気持ちもある

覚悟か居直りか

「これがエアリエルΛですか・・・・・」

　更に軽量化された鋭利なフォルムを眺めながら、レイウスは感慨深いように呟いた。

　ここにはいつも整備兵達の怒声が木霊している。帝国で一番賑やかな所かも知れない。それは決して

良い事では無いのだろうが。

「いつかここも安らぐ日がくるのでしょうか・・・」

　大国になればなるほど、問題と歪は増す訳で。豊かになればなるほど、人間欲が沸いて出る。

　共和国、北方を併合すれば・・・増大する我が国を東の大国も黙って見てはいまい。常に虎視眈々と

狙っているだろう。

「そう考えれば、終戦時が一番危ない・・・・」

　共和国北方連合が予想外の戦力を持っていた事もすでに知れ渡っているのだろう。

「ともかく、今はやるしか無い訳ですね」

「レイウス教官長、準備が整いました」

「解りました」

　初めて乗るエアリエルΛでも、コクピットはシルフィード時とほぼ変わらない。シートのもたれ具合

も、操縦桿の位置も、いつもと同じ見慣れたものと言うのは安心する。

「さあー、頑張るわよ。エアリエルちゃんにビイルドアップしたわたしは一味違うわよ♪」

　妙齢の女性に成長したエアリエルも、言動も小躍りも前と変わらなかった。

「まあ、一時的なものだそうですしね」

「むむ、何だかカチーンと来る台詞」

　ブー垂れるエアリエルをナチュラルに無視しながら、レイウスは静かにシステムを起動し始めた。

「身体、訛ってないと良いのですが」　

　この振動が心地良く感るほど、自分は機兵に乗っていたのかと改めてしみじみ感じたのが少し感慨深

かった。

「死刑台に上がるとはこういう気持ちなのかな」

　レグスは初めて白天使を間近に眺めて一人ごちた。

　コクピットに座っても、落ち着く事が出来ない。機兵乗りには本来一番落ち着く場所なのだけれど。

ある意味、ここが家であり一番長く居る場所。

「ふう・・・」

　出撃前には優しい言葉で緊張を解いてくれるウンディーネも今回はいない。レグス以外に相性の良い

者もいない為に、今は静かに眠らされているのだろう。

「・・・・・・・・」

　この機体に搭載された光精霊第一種オリジンは何も話さない。

　何でも、今までに一度も言葉を発した事が無いそうだ。

「お前はここでずっと何を考えているのかな」

　オリジンは静かに瞬くのみ。

「システム起動！」

　メインパネルに滲みように景色が映る。

「・・・・・・・・」

　オリジンは何も言わない。　

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