本当に言いたいのはこんな気持ち

建前と本音

「で、大まかな戦略としては白天使とディアボロスを一対一にする事を優先して、わしらは後の部隊を

引き受けると言うわけだの」

「何だか、適当ですね」

「機兵には細かな戦略より、現場での戦術の方が遥かに大事だからの。それに面倒なのは嫌いだぞい」

　ドランクとレイウスは通信パネル越しに大まかな作戦を立てている。イザリーは士気を高める為に、

今ごろは部下達に向けて演説混じりの叱咤激励をしている事だろう。

　整備もすでに全機完了しつつあり、後は出陣の合図を待つのみとなっている。

　だからこれは作戦会議と言うよりは、最終確認か暇つぶしとも言える。

「ま、それほど考えなくても。白天使の方からディアボロスに向かって来てくれると思いますね。先の

戦で脅威なのはディアボロスのみだと解ったでしょうし」

「まあ、そうだの。正直言って、この新型でもあんな化物相手では辛いからの。まあ、若いもんに苦労

してもらおう」

「ですね。私達はもう充分過ぎる程働いてますし」

「おいおい、お主はまだまだ苦労せんと。せめてわしぐらいの歳までしこたま苦労してもらわん事には

納得いかんの」

「それは量より質と言う事で」

「まったく、若いもんは楽をするからいかん」

　ドランクはしかめ面で例の体操を始めた。

「ふんッ、ふんッ」

　上半身を回転する度に、ボキリボキリと小気味良く骨が鳴る。

　それがレイウスは少し羨ましい感じがする。何故に骨を鳴らすとあんなにもすっきりするのだろうか。

これだけ小気味良く鳴らしたら、どんなに気持ちが良いだろうと。

「ん、イザリーが乗り込むようだの」

「そのようですね。いよいよです」

「ま、取り合えず天使殿には眠っていただこうかの」

「ええ、なるべくなら永遠に」

　駆動系が歓喜の雄叫びを上げる。

　毎度の事ながら、ここの整備班の仕事には舌を巻く。

「調子も良さそうだの。さて、いっちょやったるかい」

　整備兵達が最後の確認をした後、次々と引き上げて行く。

「目的は白天使の破壊のみ！！全機出撃！！！」

「了解！！！」

　イザリーの掛け声を合図に機体達が次々とカタパルトから飛び出していく。

　最終決戦へと。

「戦力は五分五分、後は神のみぞ知るか・・・・・」

　イザリーは総指揮官として次々と指示を飛ばしながら一人呟く。

　敵連合と如何に国力の差があろうと、たかだか一月の成果などほとんど変わらないだろう。むしろ開

発速度の点で言えば、連合の方が有利かも知れない。

　何しろこちらは蒼い震浪の機体から得た分の技術しか無いのだから。北方の技術者であれば、すでに

それを超えるものを開発していてもおかしくは無い。

　それを考えれば、こちらの精霊力の向上を考えても今までの戦力比はそう変わらないだろう。

　つまりは量ではこちら、質ではあちらが上となる。

「まさしくイタチごっこだな」

　相手に追い付こうと頑張り、相手も追いつかれまいと頑張る。

「フッ」

　人間はそんな事を永遠に繰り返すのだろうと思うと、不謹慎ながらも笑いが吹き出してしまう。

「まあ、それも良いかも知れない」

　ただ、戦争を決めるのが上層部でその被害を受けるのはいつも一兵卒なのが気に入らない。

　戦いたいなら、自分で戦えばいい。

　イザリーはどうせ戦うのが性ならば、そんな世界が来れば良いと思う。他人の代わりに命をかけるの

はとても馬鹿馬鹿しい事だと。

「ちゃんと生き残るんだぞ・・」

　その小さな呟きが右将軍としてでは無く、イザリー個人の本当の願いだった。

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