始まりは必然的に

現世現神

　何度もの戦いで荒廃し尽くした感のする荒野を無数の機兵達が砂煙を巻き散らかしながら進軍する。

　青、緑、赤、蒼、碧、銀、そして白と黒。

　色とりどりに塗装された機体がそれと同じ数の光を放っている。

　最終決戦は静かに始まった。

「二隊横陣！！」

　イザリーの掛け声と共に帝国機が瞬時に陣を組む。

　エアリエル隊を前面に出し、イフリート隊が後尾で援護する迎え撃ちの伝統的な陣形。数を活かし、

被害を最小にするのが大国である帝国戦術の基本となっている。帝国では守りきれば勝ちなのである。

「これは防衛戦ではない、攻めに転じろ！！」

　レグスの指示に歓声で応える共和国機。帝国に反して指揮官機を最先に置く矢のような突撃陣。

　帝国と相反する少数精鋭の強襲を主としてきた共和国。まともにやっても勝ち目の薄い小国が生き残

る為にはハイリスクハイリターンの戦術を取るしか無かった。例え引き分けても、二度目の出撃が出来

る余裕が無かったからである。

「皆、行くわよ！！」　

　マリエルに続いて次々と加速する北方機。

　精霊力を使わない北方の操機兵は、本来そのステルス性を活かした一撃離脱戦法を得意とする。機動

性にも優れたその機体を用いたゲリラ戦も恐れられている。

　そして何よりも生還率が最も高い、生き残る事のみが彼女達の勝利なのだ。

　連合国よりもやはり帝国の方が数は少なからず勝っているように見える。良く見ると連合機には細か

い傷が残されているのにも気付き、ぎりぎりの戦いを強いられているのが解る。

　しかし何よりも北方の技術者の造った機体の性能は、帝国は元よりこの大陸のどの国家よりも優れて

いると言われている。

　現存する始祖機の中でも唯一稼動している、シルバーヴァルキリーからもそれは解るだろう。

　そして、それらを眺めるようにして最後尾上空に佇む白天使。

　それを見据える黒悪魔ディアボロス。

　この機神とも言える二機は牽制しあうかのようにじっと睨み合っている。

　大方の予想通り、二神は敵をお互いのみと認識しているようだ。

　びりびりとした何とも言えない緊張感が場を支配している。

「黒い奴・・・・貴様さえいなければ・・」

「白天使・・・・お前さえ出てこなければ・・」

　一方は常に妨害され、あまつさえ自分をこの機体に乗せる破目になった事に対するモノ。一方はこん

な戦争を始める原因になった事に対するモノ。

　そして何より自分の乗る機体に対する恐怖と、それ以上の怒り。

「こんな事にはならなかった！！！」

　同じ言葉を色んなモノと共に吐き出しながら叫び、白と黒の神は一直線にお互いを目指し、対角線上

の中心の空中に一瞬で現出し、下のあらゆる音を弾き飛ばす轟音を発しながら激突した。

　空気が見えない物質の塊となって吐き出され、球を描くように広がる。

　大気を軋ませるような鈍い音が響き、閃くように火花が数多に散る。

　こうして互いの神とその下に座す人同士の必然にして無意味な決戦を迎える事となった。

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