未だ目覚めざる者もいる

目覚めよ遥かなる者

　研ぎ澄まされた音がする。

　全てを切裂くようでいて、何ものも触れ難い。そんな音が。

「ああああああああッ！！」

「おおおおおおおおッ！！」

　黒と白の神機が激突する度に、止め処なくエネルギーが霧散する。

　未だお互いが操作に慣れていないように、しかしそれですらこの二機にとっては牽制でしか無い。本

来の半分も力を発揮しておらず、否、発揮出来ないようだ。

　この二機に乗るゼロライムとレグス少尉はその度に自らの無力を思い知らされる。

　本来の力の程が解るのに、それをまったく発揮出来ない自分。これほどもどかしい事も無いだろう。

「何故応えん、オリジン！」

　光精霊第一種オリジンは相変わらず何も応えようとはしない。柔らかな光をたたえたままに。

「くッ、覚悟が足りないと言う事か。自ら燃え尽きて尚、動かそうと言う覚悟が！」

　歯軋りしながらも更に怒りが増すのを感じる。

　何に怒っているのか、それすら忘れ去る程に。

「もっと出せるはずなんだけど・・・・」

　対するゼロライムは力を発揮するのを躊躇っている。

「この精霊は・・・・・」

　真に覚醒しつつある暗黒精霊特種ルシファーは黒い塊が蠢くような姿でこちらを見ている。そこから

感じるのは畏怖、薄れて見えるその目がマダダマダダと言っているような気がする。

　そしてお互いが思う事は。

「何故力を解放しない！？」

　それのみであった。

　どちらも相手が使えば覚悟も出来ると、それだけをある意味願っているのだった。

「私を侮っているのか。それとも慎重なタイプなのか・・・」

　初めから戦況は変わらず、ずっと格闘戦を続けている。

「あの火力を使わないのはありがたいが・・・・」

　双肩にあるカノン砲を思うとぞっとする。ギリアムが使った時に白天使は一度浴びているが、今回も

そうなるとは限らない。

　何より・・・・

「ギリアムよりも出力が出ていない・・・・」

　レグスは唇を強く噛んだ。血がじわりと浮き上がるように滲み出る。

　しかし確かに今まで自分が見て来た白天使のスピードはこんなものでは無かった。視認する事も出来

ず残像すら見える程に、速度であれば何ものも及ばない程のはずなのだ。

「ともかくこのままでは・・・・」

　焦りは募るのみ。

「相手は様子見なのかな・・・・」

　前の戦闘に比べて対峙する白天使のスピードは明らかに劣る。そしてディアボロスも。

「今先に仕掛けられたら・・・・」

　何も出来ずに破壊されるかも知れない。例えディアボロスがどんなに強固でも、中の自分はその衝撃

に耐えられないだろう。

　戦闘システムが完全に起動出来ない今は、ゼロライムもただ祈るのみだった。

　二神のそんな思惑は他所に。

　下での帝国と連合の決戦は激しさを増し続け。

　黒悪魔は不満そうにそれを睨んでいる。

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