それはあくまで戯れ

神下の戯れ

　整然と並ぶ帝国機達に共和国機が切り込んで行く。

　それに揺さぶられた隙を狙うようにあらゆる角度から北方機が射撃を繰り返す。どうやら指揮官機を

狙っているようだ。

「むう、やはりわしらから狙ってきおったようだの。レイウス、イザリー、わしらも分散するぞい」

「了解！」

　戦況を読み戦術に長けるドランクが、三人の中ではリーダーシップを取るのが暗黙の了解となってい

る。

　移動の途中も機体を幾条もの光線が掠めていく。

「流石に狙いが正確だの。レイウス、わしらは例の始祖機を探すぞい。イザリーは部隊への指令を頼む

の」

「了解、あの機体にもそろそろ眠ってもらいませんとね」

「解った、二人とも気をつけて」

　ドランクが西方向、レイウスが東方向へ進路を向ける。イザリーは部下機と通信を密に取り、不利な

小隊へすぐさま援軍を向ける。

「数ではこちらが有利なのだ、孤立しないように戦えば負ける事は無い！！」

　そしてイザリーは常に鼓舞する為の檄を飛ばす。指揮能力でイザリーに並ぶものは大陸でもそうはい

ないだろう。

「レイウス、ドランク。後方に始祖機発見せりだ！至急向かってくれ」

「なるほどの後方からか。しかし、一機駆けとは舐められたものだぞい。わしが墓標に変えてくれるわ

い！」

　両頬をバシッと叩くドランク。

「ドランク、気合を入れすぎて年寄りの冷や水にならないようにご注意を」

「む、レイウスよ。言ってくれるのう・・・・。ならばどちらが始祖機を仕留めるか勝負だぞい！」

「望む所です！」

　新型のブースターが小気味の良い音をたてながら、イフリートΛの速度を跳ね上げる。

「ふむ、このイフリート、サラマンダーを遥かに上回る機動性だの。これならどんな機体でも捉えられ

る。お主も気合入れるのだぞい、イフリート！！」

「オレサマに任せておけ！全て焼き尽くし、吹き飛ばしてくれるわ！！」

　小パネルに映るイフリートも猛るようにその身に纏う炎を吹き上がらせる。

「やれやれ、火炎精霊はこれだから。エアリエル、スピードで負ける訳にはいきませんよ！」

「このエアリエルちゃんに任せなさいって！」

　エアリエルΛは全身のブースターとバーニアを吹き荒し、暴風のように大気を切り刻みながら加速す

る。近くに居た敵機や木々はその余波のカマイタチで無数に切り刻まれる。

「あら、二人同時とは女冥利につきますわね。でも、もう私の心は決まってますのでお引取り願いまし

ょうかしら」

　前方の木々の間から突然現れた始祖機シルバー・ヴァルキリーがエアリエルΛに跳び込みながら、三

連蹴を放つ。

「くッ！？」

　レイウスは左半身のバーニアを吹かし、辛うじてそれをかわす。

「向こうからやってくるとは、やはり姿を見せたのはわしらをおびき寄せる罠だったかの。しかし、わ

しら二人を相手にしようなどと、つくづく舐められたものだの！！」

　イフリートΛの両肩の三連砲が火を噴く。

「はッ！！」

　マリエルはそれを空中で回転しながらひらりと避ける。

「ううむ、運動性や敏捷性ではやはり操機兵にはかなわんの。レイウス、動きを止めてくれい！」

「了解、援護も頼みます」

　エアリエルΛが瞬時に飛び込み、両肩から取り出した精霊力ブレードの緑の刃を始祖機に叩きつける。

「くッ！」

　マリエルはそれを槍状ビームライフルで辛うじて防ぐ。

　こうして神下の決戦は更に激しさを増していく。

　神々の瞳に照らされながら。　

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