引き金

中天の福音

　上空では依然、牽制と睨み合いを繰り返して居た。

　スピード運動性では白天使、パワーと火力ではディアボロスと言う感じだが。どちらもどちらを凌駕

する程では無く。じりじりと時間と魔力だけが消費されて行く。

「両腕ガトリング！！」

　ディアボロスの両腕から筒状に銃身が引き出し、回転しながら黒色弾を撒き散らす。

「そんなもので！！」

　しかしそれはすべて白天使の全身から発せられる光によって打ち消される。

　こんな風にして、決定打を生み出さないままに刻一刻と過ぎ去って行くのである。

「ルシファー、まだなのか？」

　ゼロライムを見据えるように突き刺す視線はマダダと語る。

「でもこのままじゃあ・・・・」

　ディアボロスを動かす度に気力がごっそり抜け落ちるような疲労感に襲われる。先程から全力疾走し

て来たかのように息も荒く、頭も重い。

「ナラバ、貴様ノ力ヲカセ」

「ん、俺の？？」

「ソウダ、貴様ノ魔力ヲ全テヨコセ。ソウスレバ我ハ目覚メル・・・・・ソシテ奴モ・・・フフ」

　どちらにしてもこのままでは、魔力が尽きるのもそう遠くない。どうせ時間の問題ならばと、ゼロラ

イムは覚悟を決めるように両頬を勢い良く叩いた。

　サブユニットのエアリエルがそれを心配そうに見ている。

「よし、やるぞルシファー！こいつさえ倒せば終わるんだ、後の事なんか考え無い」

「フフ、ヨカロウ・・・良イ度胸ダ・・フフフ、気ニ入イッタ」

　小パネルの黒い塊の鼓動がドクンドクンと強くなる。

「ぐうッ・・・！？」

　その度にゼロライムは全身から何かがごっそりと奪われている感触に、吐き気がする程の疲労感を感

じ、あの時のように意識がごっそり持っていかれるような恐怖が奥底から浮き上がってくる。

「心配スルナ・・・コレガ本来ノ・・・・」

　ルシファーの呟きが遠く薄れる・・・・。

「ん、これは・・・・」

　一方レグスも白天使の変化を感じ取っていた。

　白天使を覆う光が酷く澄んでいる。全てに融けるように、全てを透すように。

　そして、オリジンが・・・。

「応えたのか、オリジンが・・・」

　光に包まれたモノが割れるように開いて、そこから半透明の翼と身体を持つ者が現出する。溢れ出る

ような輝きは不思議に安らかで、眩しくも違和感も無い。しいていうならば、心に浮かぶ太陽・・・そ

んな感じだった。

「これもまた流れなれば・・・私の力を与えましょう」

　その瞬間、レグスは自分と白天使が確かに繋がったのを感じた。

　意識が澄み渡り、すべてを見据えるようなそんな不思議な感覚。自分の中の全てのものが動き出し、

本当に目覚めたようなそんな感覚が止め処なく溢れ込んで来る。

「これか・・・、これが白天使の・・・・」

　全身から溢れ出さんばかりの光が白金に実体化し、翼、甲冑、そんなものを生み出して行く。

　最後に生まれた三叉の矛を振りかざし、白天使が現神す。

　レグスは胎内に居る赤子のような、守られている安心感と安らいで澄みきっていく心を感じていた。

「さあ、好きなだけ暴れなさい、それが業なればこそ。そして私とこの機体を・・・・」

　それを見れば、白天使が懐かしそうに微笑んだような気がしたのかも知れない。

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