生み出された一対

始めの者

「なんなの、この光は！？」

　下界の者達が一斉に傅くように仰ぎ見る。

　激しく、そして安らかな光の塊が現神した。女性的な柔らかなフォルムはそのままに、甲冑を纏った

その姿は天使と言うよりは戦女神。　　

　マリエルが駆るシルバー・ヴァルキリーに似ているが、質量そのものが違う。圧倒的なほどの存在感

と神秘感。そして心の奥底まで照らすような暖かな光。

「・・・・サリア・・」

　今はもう伝承のみに伝わる古の創造神、月女神サリアの名を思い出す。

「ヴァルキリーは女神の似姿だと聞いた事があるけれど・・・・」

　涙が溢れ出るような安堵感に覆われる。

「でも、今は・・・・」

　マリエルは再び操縦桿を握り締める。

「ふん、これが白い天使と言われる所以かの。だが、そんなものは心の持ち様。幻想にすぎんわい！若

造共！！何を呆けておるか！！！」

　ドランクの一喝で再び下界の時が動き始める。

「流石ですね、ドランク」

「レイウスよ、まだまだお主らにも負けんぞい。それに見よ、わしらの神さんもお目覚めだぞい。ま、

ちいっとばっかし柄が悪そうだがの」

「フフ、私達も負けてはいられませんね」

　レイウス、ドランクも再び操縦桿を握る腕に力を込める。

「さて、やるぞい。神には神の、人には人のやるべき事、やらざるを得ない事があるからの」

「ええ、神の僕如きに負けられませんね」

　そして再び三機が激突する。

　どくんどくんとやけに何かの鼓動が聴こえる。

　夢を見ているような希薄感、でも感覚だけは研ぎ澄まされている気がしている。

「フフフ、次ハ我等ノ番ダ・・・」

　小パネルに映る黒塊が剥ぎ取られるように一枚一枚捲られて行き、その一枚一枚が黒い翼となる。そ

して眩い闇の中に黒影の天使と言った感じの男が佇んでいた。　

「ククク、驚クノハコレカラヨ・・・見ヨ、己ガ感覚デ」

　そしてそれに呼応するようにディアボロスも変化し始める。

　身を喰らうように纏わりついて居た、どす黒い輝きが全身に吸い込まれ。吸い込んだ部分が二周り程

盛り上がる。まるで筋肉が迫り上がるように。

　巨大化した肉体に合わせるように、全身から突き出す鋭い刺のようなモノが更に伸び、刃の如く鈍い

光を放つ。

　口がゆっくりと開き、無数の牙が飛び出す。

「グオオオオオオオオオオオオオオオ！！！」

　そして歓喜の雄叫びと共に無数の刺が両掌に集まり、蠢くように収縮と膨張を繰り返しながら一対の

大剣へと変貌した。

　それを両腕で引き抜くように振り払う度、闇の切端が零れ落ちる。

「ガアアアアアアアッ！！」

　眼は赤くらんらんと輝き、翼はあくまで禍々しい。

　白天使が人外のモノならば、ディアボロスはさしずめ魔獣。圧倒される程の生命の躍動を感じる。

「狂エル神ハ破壊スベシ。我ハ貴様、貴様ハ我ダ」

　ゼロライムは自分とディアボロスが一体化しているのを感じた。

　ディアボロスの眼で見るものが自分の視界であり、ディアボロスの手足こそがゼロライムの手足。身

体中が熱を帯びたようにカッカと燃え盛り、暴れたくて仕方が無い。

　そして感覚だけが浮かび上がる。

BACK・ EXIT・ NEXT