そして意図された結末へ

始祖魔人

　白天使の八つ帯から放たれる光線をものともせず、黒き獣と化したディアボロスが正に野獣さながら

の形相で突っ込んで来る。

　体長と同じ程もありそうな長大な大剣を手足の如く振るうその様は、さながら鬼神か。

「ガアアアアアアアア！！」

「化物が！！」

　レグスは大剣を三叉の矛で必至に受け流す。オリジンの精霊力もルシファーと打ち消しあっているよ

うで、衝撃がもろに機体を通して身体に伝わる。

　骨の軋む声が聴こえてきそうだ。

「はああああッ！！」

　右手に持った矛でやり過ごしながら、左手に生み出した光球を至近距離のまま投げ付ける。

「ガアッ！！」

　ディアボロスはそれを瞬時に下降して避け、下から突き上げるように大剣を白天使の叩きつける。

「ぐッ！！」

　直撃を何とか防いだものの、そのまま遥か上方へと吹き飛ばされ、またしても衝撃が全身を突き抜け

る。

　それを堪えながら、ブースターを全開に吹かして何とか勢いを相殺。下を見れば、摩擦で赤い炎線が

浮き出ているのが見えた。そして黒い影が視界を塞ぐ。

「グアアアアアアアアア！！！」

「なッ！！？」

　上から下へ、下から上へと何度も大剣を打ち付けられる。実体化した装甲が本体を守ってくれるもの

の、その度に少しずつ確実に削られた光が火花のように崩れて霧散していく。

　パワーもスピードも桁違いに上がっている。白天使も今は完全に機能しているはずなのに、それすら

何の気休めにもならない程。慣性も空気抵抗その他もろもろのあらゆる法則を無視して、際限なく増し

ていく。

「うああああああッ！！」

　レグスは最大級の光弾を投げ付ける。しかしそれも大口を開けたディアボロスが美味そうに喰らう。

　八つ帯から光線を放つ。叫び声一つでかき消される。

　矛を振るう。大剣であっさり跳ね返される。

「おかしい・・・こんな・・・・」

　しかもこちらが攻撃をしかける度にディアボロスの力が増して、こちらの力が薄まっていくように感

じる。まるで・・・・・

「喰われているのか・・・」

　千里を照らす程に溢れていたオリジンの光も、今はもう面影も無い。

「そんなはずは無い！！」

　両手に握り締められた矛に煌く光が宿る。

「光こそが森羅万象すべての法則を支配するモノ！闇などその影に過ぎないはずだ！！」

　矛に宿る光が白金に実体化し、尚も膨らみながら巨大な槍を形作る。

「創造主が破壊者に屈するものか！くらうが良い、宇宙開闢の煌きを！！」

　すべての光が大槍に吸い込まれ、一本の完全な大槍となる。

「はあああああああああああああッ！！！！」

　そして気合と共にとてつもない質量の物体が隕石のようにディアボロスへ向けて降下していく。

　そこに存在する全てのモノを照らし、埋光させながら。

「消えてしまえ、黒い悪魔！！」

　レグスの心にはいつの間にかディアボロスを消す事だけしか浮かばなくなっていた。それは恐怖から

だったかも知れないし、使命感からだったかも知れない。或いは色んな面倒な事から逃れたかったのか

も。

　ただオリジンのみが労わるように優しく微笑んでいた。

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