食い倒れ

混沌は包容す

　光の御柱が降りて来る。

「（綺麗だ・・・・・・）」

　圧倒される質量の光とエネルギー。そこから零れる光片ですら、太陽に匹敵する輝きを放っている。

乱反射し合う光線達が無数のプリズムを生み出し、更に輝きを引き立てる。

　それに比例して光の柱は増大し、全てを白く埋め尽くすように容赦無く世界を染め替えていく。

「ガアアアアッ！！」

　そしてゼロライムは歓喜の雄叫びを上げる。正確にはディアボロスなのだろうが、今はどちらがどち

らでも関係無い。全ての感覚と感情は相互にリンクされている。

　同化してからと言うもの、ゼロライムは常に飢えていた。何に飢えていたのかは解らない、ただ空腹

と飢餓感だけが頭を支配している。

「（ご馳走が降りて来る・・・・）」

　膨大なエネルギーが例え己の属性と相反するものでせよ、今はただ美味そうだくらいにしか思えない

のだった。そして満タセ満タセと何処かで声がする。それがお前を満タスモノだと。

「ガオオオオオオオオオアアアア！！」

　そして光の柱がゼロライムに衝突する。

　その時すべての視界もすべての音域もただ眩く眩く、光のみが在る世界へと変貌を遂げた。

　爆音も衝撃も無く、ただ光のみが・・・・・。

　光のみが眼を、耳を、何もかを覆い尽くす。白金の瞬きだけが幾重にも降り積もり、自らも光と溶け

合ったような錯覚を起こしながら。

「光・・・・・、そんなちっぽけなものでは無いぞい。これは・・・」

　そして一枚一枚剥がれ落ちていくように外側から感覚が戻って来る。さながら肥大した巨大な精神体

を一つの肉塊に押し込めるように。

　すべてが剥がれ落ち、すべての感覚が戻り。それと同時に数多の衝撃と轟音が頭全部を貫き通る。

「ぬああああああああッ！！！」

　フラッシュバックするように断続的な未整理の情報が流れ込み、脳が沸騰するような飽和感が訪れた

後、ようやく精神が自分の下へと帰った気がした。

「はーーーッ、はーーーーッ、はーーーーッ！」

　未知の感覚が頭の端をちりちりと焼き付いていくようで、ドランクも流石に平静ではいられなかった。

もし魔力も低く、訓練も積んでいないものがここに居たならあの一瞬で脳が焼き切れていただろう。

「くッ、しっかりするのだぞい！人の戦いはまだまだ終わらんからの！！」

　色んなモノを堪えながらも通信で檄を飛ばす。

「指揮官が弱い所を見せる訳にはいかんからの・・・・。しかし何が・・・・」

　その時不意に空から降り落ちて来た嫌な音に神達を仰ぎ見てみる。

「なッ！？」

　そこには無惨にディアボロスに片腕を食い千切られる白天使の姿が。

　気のせいかディアボロスが二周り程大きく、色も濃んでいるような気がした。

「ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ！！！」

　高らかに笑っているようにも思えるその咆哮に、ドランクは首筋の辺りを生暖かい汗が流れた気がし

た。

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