鮮やかなり撤退

第一次接触戦果

　緑と蒼の精霊力フィールドが膨れ上がり、互いの精霊力場を相殺する。

　牽制するようにレイウス機がマシンガンを乱射して更に距離を縮める。

「くうッ、流石に効いてるな・・・。何と言う殺傷力のあるマシンガンだ・・・。ソードライフルを失

ったのはやはり痛いか・・」

　レグスは背中の主バーニアを使って急激な左旋回を試みる。だが、狙うと言うよりもばら撒かれるよ

うに打ち出された弾丸を全て避けきれず、右脚部のバーニアを吹き飛ばされてしまった。

　そして着地バランスを少し崩した所へ、帝国機の援護射撃を浴びせられる。

「これは不味いな・・・・機体バランスが崩れてしまった。しかも・・・」

　そこへタイミングを合わせたように緑の機体、レイウス機が飛び込みマシンガンの近接射撃からパン

チの連撃、更に脚部バーニアを利用し加速を乗せた回し蹴りを打ち込んで来る。

　レグスは辛うじて防御するが、徐々にダメージが蓄積されていく。

「この相手は不味い・・・。何と言う腕だ・・・あの無数に付けられているバーニアを上手く操ってい

る・・・。何と言うバランスとセンスの良さだ」

「少尉、やはり今の状態では部が悪過ぎます。一対一ならまだしも、これではこの機体でも・・・」

　感服するレグス少尉にウンディーネが心配そうに呟く。

「そうだな。足止めもこの辺りで限界だろう・・・・、強制離脱する」

　レグス機、蒼い機体の肩が開きそこからぱらぱらと５，６個の球体が零れ落ちる。

「ん、あれは・・・・」

　レイウスはいち早く気付き、バーニアを一斉に逆噴射させ一気に距離を離す。

　落ちた球体が連鎖爆発し、辺り一面に目に突き刺さる程の閃光が広がる。

　レイウスが機体を立て直した時にはすでに敵影は遥か彼方だった。

「逃がしたか・・・。引き際を心得ている相手は厄介だな・・・。それよりも、ありがとうシルフ。君

のおかげで助かった」

「えへへ～♪遮光フィルターをとっさに出せるこの反応の早さと臨機応変さ。流石シルフちゃん」

　パネルのシルフは自画自賛しながら小躍りをしている。

「なんじゃなんじゃ、もう終わりかの」

　そこへ後ろの赤いドランク機から通信が入る。

「ええ、流石は蒼い震浪という所ですかね。行動が素早い」

「確かにの、始めの先制射撃が無ければ危なかったかも知れんの」

「まあ、初めから追い返せれば御の字だとは思ってましたから。こちらの被害がほとんど出なかっただ

けでも良しとしましょう」

「そうだの。・・・・・・しかしあんな部隊が他にも居るとヤバイかも知れんの・・・・」

　ドランクは機体モニター越しに見える霊機兵達の残骸を見ながら、溜息とも嘆きとも付かない呟きを

洩らした。良く見知った仲の者はいないとは言え、これでまた数十人の同朋を失った事になる。

　せめてとドランクは青年兵達と共に黙祷を捧げた。

「しかし、初陣にしては中々のものでしたね。流石はドランク殿、指示能力には感服します」

「いやいや、それは違うぞいレイウス。わしはただ目を瞑って打ちまくれと指示しただけじゃい。感服

するなら、あのショットガンを持たせてくれたギイじいさんにだの。ただの砲台にするのなら、腕の差

はあまり関係無いからの。ロックオンさせてもいないしの」

　その通信にレイウスは変な汗が額を這うのを感じた。

「では運が悪ければ私の機体に・・・・」

「おお、まあそうだの。心配するな、その装甲を打ち抜ける程の威力もあのショットガンには無いから

の。元々威嚇用じゃい」

「ドランク殿・・・・・・・」

　そうしてレイウス機の背中には銃弾の痕がちゃっかりと合った。

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