蒼い残影

光刃の軌跡

　第一機兵団の救援に到着した時、目前に轟音が響き。一体のシルフィード機が爆破炎上するのが見え

た。他の機体もほとんどが破壊され、残っている機体も見る間に減っていく。

　そして盛大な土煙の中から、空気摩擦で赤みがかっている蒼い機影が覗いた。

「レイウス、ちと遅かったようだの。たった今、全部隊が壊滅したぞい・・・・。しかし、なんちゅう

速さじゃい。してどうする、このまま奇襲返しと行くかの」

「ドランク殿、それをすれば他の者達が孤立してしまいます。ここは中距離射撃といきましょう。あち

らの速さはおそらく従来のシルフィードに引けを取らない程でしょうから」

「承知した。おい、若造共聞いたの。一斉射撃じゃい、撃て撃てい！！」

　全機前方へ一斉に銃器から撃ち出す。

　中口径ショットガン、大口径マシンガン、中距離用長口径砲身が一斉に火を噴き、数多の銃弾が降り

注ぐ。一機前進していた蒼い機体は流石に避けきれない様子で、装甲が剥がれ落ちながら慌てて後退し

て行く。

　気付くのが遅れた他の共和国軍ウンディーネ機も、状況を把握する前に銃弾の雨に降られ何機か深刻

なダメージを負ってしまったようだった。

「くうッ、まさかここまで速く到着するとは・・・・・。侮ったか」

「レグス少尉、大丈夫ですか！？」

「ああ、こちらは心配無い。盾にしたソードライフルがやられてしまったが。部隊の被害は？」

「ハッ、３機程直撃を受けてしまったようです。それらの機体は戦闘続行不可能かと」

「そうか・・・・。全機帰還するぞ！！」

　レグス自身の機体も先程の全速攻撃と敵射撃で機体に少なからずダメージを受けていた。前方に見え

る緑と赤の機体を睨みながら離脱をする為に部下達に援護射撃を命ずる。

「ほいほい、反撃が来たぞい。小僧共、避けろい！！」

　ドランクの声と共に帝国側の機体は一斉に左右に散開しながら高速移動をする。

「ふむふむ、流石改良型は違うの。反応が良いわ。してどうするかの、あの蒼い奴一機に狙いを絞るか

の」

「ええ、離脱を開始したようですし。今から間に合いそうなのは突出しているあの蒼い奴一機だけでし

ょうしね」

「相変わらずだの。間に合いそうで無くてもやってみるのが心意気だぞい」

「疲れる事は嫌いです。では、私が仕掛けますからドランク殿はあの子達を頼みます。そして援護を」

「了解したぞい。さあ若造共、張り切って撃ちまくるぞい！！」

　ドランク以下帝国機兵達は一斉に弾丸を撃ち出す。そしてその弾丸の波に乗るように緑に塗装された

レイウス機が一直線に敵機へ向かう。

「行くぞシルフ！ここが頑張りどころだ」

「アイアイサー！ウンディーネに負けてられないからね」

　目の前のパネルから風の第三種精霊シルフが楽しそうに返事をする。そして小さな身体をぷるぷると

小刻みに揺らせて、気合気合～♪と声援を飛ばす。

　それに応じるように緑の機体はバーニアを一斉に開き、まるで風に融けるように爆発的に加速する。

「あの機体は・・・・」

　レグス少尉は全速後退を続けながら、迫ってくる機影の速さに驚きを隠せない様子だった。

「そのようですわ。あの緑と赤二つの機体からシルフとサラマンダーの懐かしい匂いを感じますもの」

　側のパネルに水の第三種精霊ウンディーネの姿が浮かび上がる。

「やはりオリジナルか・・・・。これでは直に追いつかれるな・・・、何と言う速さだ」

「はい、私の力では本気のシルフを引き離す事は出来ません。すみません・・・・」

「君が気にする事では無い。風の精霊に速さで勝てる者などおらんよ」

　緑の機影はすでに目の前。飛んで来る砲弾は何とか避けているものの、また部下の何機かは直撃を受

けたようだった。

「ここは一つ勝負を仕掛けてみる。やるぞウンディーネ、こちらも新型。今までとは違うと言う事を見

せつけてみせる！」

「はい、承知致しました」

　レグスの蒼い機体は逆噴射をかけて慣性を殺す。

「やりあうつもりか、面白い！！」

　レイウスの緑の機体も速度を緩和させ、戦闘態勢に入りつつあった。

　そして蒼と緑、ウンディーネとシルフの精霊力が激突する！

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