疾風迅雷

疾流光陰矢の如し

「ふむ、中々やってくれる。どうやら奇襲にも慣れてきているようだ」

　レグス少尉は左右に機体を高速移動させながら近付き、最前列の隊の一機を踏み付けながらその反動

を利用して跳躍。そして両腕に装備されたソードライフルで左右の機体を撃ち抜く。それに続くように

部下の機体が残りの機体を撃破する。

　そこへサラマンダー隊の銃弾が降り注ぎ、爆音と爆風を巻き起こす。

「少尉、これ以上近付くのは危険です」

「そうだな、しかし出撃したからには戦果を上げねば。我々は物資に余裕が無い。１から６機までは左

旋回、残りは右旋回して後ろへ回り込め！この風塵ならあちらからも見えん！」

「了解！！」

　共和国汎用機ウンディーネ達は左右に分かれ、急なカーブを付けて敵陣へと強襲する。

　蒼い機体だけが矢のように爆音の中へ切り込んで行く。

「少尉、危険です！！」

「いやこの機体ならば可能だ。ウンディーネよ、私に力を貸してくれ」

　霊機がそれに応えるように大きく鳴動し始める。

　そして蒼い機体の速度計が爆発的に跳ね上がる。

「くおおおおおおおおッ！」

　身体がシートに押し付けられ、大地から機体越しに伝わる振動に節々が痛みを発して警告の悲鳴を上

げる。

「堰を切った大河の流れは誰にも阻む事など出来ん！！」

　

「ギブラー団長！一機物凄い速さで弾幕の中を突き進んでおります！」

「馬鹿なッ！サラマンダー隊は何をしている！照準合わせろッ！！」

「団長、速すぎて射撃線を集中させても掠りも・・・！？」

「おい、どうしたッ！？」

「敵影弾幕を抜けました！どうやら撃墜された模様！！」

　ギブラーはレーダーに急いで目を向ける。蒼い光点が一つ、ぐんぐんこちらに迫ってくる。すでに第

二防衛ラインであるサラマンダー隊を突き抜け、中央に陣していた機体はそこかしらに跳ね飛ばされて

いるようだ。

「だ、団長・・・・ま、前を・・・・」

「なッ？？」

　荒れ狂う大流の如く大気を巻き込み、切裂き駆け抜けた蒼き一筋の機影はそのまま褪せる事無く、そ

れ所か益々スピードに乗って突き進む。最早、レーダーですら捕らえ切れない。

「ラグナート右将軍閣下、ギブラー団長機が撃破された様子です！！」

「むう、あの愚か者めが！！何をしている、早く我の為の退路を確保せんか！！」

「駄目です、全部隊統制がとれません！！なッ、今度は左右から！」

　ラグナートはそれを聞き終わらない間に機体を反転させ、一目散に離脱し始めた。

「この高貴なる我がこんな所で朽ちる訳にはいかぬ。あの化物めが、今に見ておれ。こうなったら、ア

ウグストゥスの選帝公に協力してでもあれを動かしてくれる」

　その時霊機内のシルフから警告が発せられた。

「背後より近付く機体あり、至急回避、回避」

「うるさい！たかがコピーの分際で我に指図するなッ！！」

　精霊の映る画面に拳を叩き付け、出力を更に上げる。動力部と霊機がオーバーヒート寸前のレッドラ

ンプを点灯し、不規則な振動音をたてる。

「ふはははは、このシルフィードについてこられる機体など存在するものか。すぐに振り切ってくれる」

　ラグナートは構わず機体を加速させる。先程から警告音がしきりに鳴っているがそれにも気付く様子

も無い。

「見ておれ。我にここまで恥じをかかせた罪はいずれかなら・・」

　背後から容易く追いついた蒼い軌跡は止まる事無く突き進み、それに貫かれたラグナート機は一緒に

流し込まれた大気と共に膨れ。盛大な爆炎と共に跡形も無くあらゆる場所に飛び散った。

　

BACK・ EXIT・ NEXT