少しの戸惑いと

第二次戦勃発直前

　居並ぶ北方よりの救援者、操機兵達。

　いずれも白を基調とした色使いで統一させ、北方の戦乙女ヴァルキリーの名を冠する機体達である。

女性を思わせるなだらかでメリハリのあるフォルムに、主装備の大槍型ソードビームライフルが陽光を

浴びてきらきらと光揺らめいている。

　霊機を搭載していない為に、魔力と精霊の恩恵はまったく受けられないが。それ故に通常使われる魔

力計や精霊力レーダーにも反応しない、ステルス性に優れた機体となっている。それに霊機類を搭載し

なくて良いので、軽量にして重装備の特色を持つ。

　だが精霊に頼れない分、乗り手の能力に１００％左右されるのでかなりの腕が必要となるし。精霊力

に対して脆い一面があると言う欠点もある為に、ほとんど普及していない。

「救援要請に応じていただき、感謝します。私は共和国軍少尉レグス、貴女達は私の隊と共に動いても

らう事になります。よろしくお願いします」

　形式に応じたあいさつをするレグスに黄色い歓声を上げるヴァルキリー操者達。レグスは脱力しそう

になる自分を感じた。

　北方では男は整備開発。女は操機兵パイロット、通称操者を努める事になっている。軽量で小柄な女

性の方が機体の性能を活かし易いと言うのもあるが、それはあまり関係なく。建国王であるフォルティ

ーナの方針らしいと言うのが通説である。

　フォルティーナは史上稀に見る偉大な共感者であり、操者であると言われる。その操縦技術も然る事

ながら、その発想、技術力で機兵達に大いなる貢献をしてきた。魔力の衰えた人間達にとって使いやす

い霊機関を生み出した立役者の一人でもある。

　そして現在その偉大なる女傑を受け継ぐ者達はきゃぴきゃぴと話しているのであった。

「レグス少尉・・・・、本当にこの方達で大丈夫なのでしょうか・・・」

「フォウル曹長、彼女達は最も勇猛なる部隊の一つだよ。実は私も少し苦手だがね」

「自分が思うには手の一つも振って差し上げたら如何かと」

「うーむ、そうかな。まあ友好的にしておきたいものだしな」

　部下である下士官の進めに応じ、レグスは軽くヴァルキリー隊員達に手を振る。すると、彼女達はと

ても満足したらしく、再度歓声を上げてから各々の愛機に乗り込んでいった。

「少尉、どうやら上手くいっているようです」

「そうみたいだな。ちょっと堅かったかとも思ったが、何とかなったようだ。私も修行が足りない」

「あっ、少尉。マリエル王女が来られます、何とかここも乗り切って下さい」

「そうか・・・。あの方自ら来られたのか、これは心強い。そして少しやり難いか」

　レグスは少し苦笑を浮かべてから、にこやかな表情に戻し。ヴァルキリー隊の指揮官でもある、北方

の王女の下へと進み出た。こういう時は戦闘中以上に緊張する。

「レグス様、再びお会いできて光栄です。私達をどうぞご自由にお使い下さい」

　レグスは軽く跪いて丁寧に謝辞を述べる。

「お会い出来て私こそ光栄に思います。どうかそのお力をお貸し下さい」

「あら、そんなに畏まらなくても。私と少尉の仲なのですから。では、また作戦遂行後にゆっくりお話

しましょう」

　そう言うとマリエル王女は艶やかな銀髪を翻し、反射する陽光を散らしながら機体へと乗り込む。隣

の侍従が柔らかい笑みを寄越しながら、後を追うように隣の機体へと乗り込んだ。

　特別に銀色に塗装され、神々しさすら感じさせられるマリエル専用機は、フォルティーナより代々受

け継がれ改良されて来た始祖機の一体だと言われる。全ての機兵の元でもある始祖機は魔動機兵にすら

劣らない力を秘めていると噂されるが、実際に稼動しているのを見た者は少ない。

「少尉・・・・、あれが噂の始祖機なのですね・・・」

「ああ、神の加護を失った古の時代より受け継がれているモノだと言うが・・・。私も見たのは初めて

だ。とにかく、彼女達の協力があれば先の出撃のような失態を見せる事はもう無いだろう。それに白い

天使などに頼らなくてすむ」

「はい・・・」

　偉大なるその姿を眺め。それからレグス隊も静かに整備された愛機達に乗り込んだ。　　

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