迸る不快感

基地奪回戦

　元前線基地の前にはすでに例の白い機体達がずらりと並んでいた。

　基地内の精霊力レーダーの感度を考えれば、すでに待ち構えているだろうとは思っていたが。それで

もこうまで完璧に布陣するとは、その動きの速さには感服するしかない。

　基地内に設置された射撃台と白い機体の後ろには共和国軍汎用機ウンディーネの姿も見える。

　こちらが襲われた時とは違い、戦闘準備は万全と言う訳だろう。

「うーむ、これは困ったの。こうなると特攻か、部隊を分けて挟撃するくらいしかないの」

　対して帝国軍は以前共和国北方連合軍が居た、岩場の後ろに布陣している。謀らずもまったく逆の立

場となった訳である。

「そうですね・・・・。ドランク、貴方達はここで援護をお願いします。ここからの射撃の有効性は以

前の戦いで実証済みですし。アウグストゥスの選帝公閣下の部隊は半隊に海岸線への警戒をお願いしま

す。敵軍の水中専用機が伏兵されている可能性もありますし」

　選帝公軍隊長は了解したとの旨通信し返す。どうやら、こちらの指示通りに動いてくれるらしい。階

級としてはあちらの方が上だろうに、出来た人だとレイウスは満足そうに感心もした。

「レイウスよ、それではお主が特攻をかけると言うのかの」

　ドランクはサポートだけをするのは詰まらない様子。

「ええ、選帝公隊の半隊と共に突撃をかけようと思います。あの白い機体達は無視して、基地内の占拠

を目指しますからしっかり援護は頼みますよ」

「解った。白い機体はこちらで引き受けるぞい。まずはこちらに誘い出さねばの」

「それは任せて下さい。やって見せますよ」

「ほほう、今回は自信があるようだの」

「この機体なら何とかなりそうですのでね」

　そう言うと、レイウスは選帝公半隊と共に突入陣形を組み始める。黒いレイウス機を先頭に矢印型に

並び、矢を引き絞るかのように黒い翼型のブースターを大きく広げる。

「さて、行きますよ皆さん」

　黒い翼が低く唸りを上げたかと思うと、大気が歪むような音を立て、吹き飛ぶように爆塵を巻き上げ

ながら突進して行く。

　選帝公半隊もそれに続いて行く。

　　

　前方より土煙が恐ろしいスピードで迫ってくるのが見える。

「レグス様、私達も迎え撃ちます」

「マリエル様、お気をつけて」

　北方の部隊もブースターを吹き上げながら突き進んで行く。

「我々は友軍を援護するぞ！」

「ハッ！」

　レグス隊も一斉に援護射撃を開始する。

「しかし・・・・・、何なのだこの感じは・・」

　敵軍が姿を見せた時から、胃の奥にひどい圧迫感を感じる。押しつぶされそうな程に。

「ウンディーネ、状況が把握できるか？」

「私にも良く解りませんが、とても強い精霊力を感じます。私達も飲み込まれてしまうくらいの、そん

な嫌な力と共に。もしかすると、高位精霊かも知れません・・・・」

　パネルに映るウンディーネもひどく不安げな儚さを表情に浮かべている。気のせいかその姿が薄らい

だようにも感じられた。

「ん、何だあの機体は！？」

　見た事も無い黒い機影が見える。

「くっ！」

　その黒いモノを見た途端、圧迫感が膨れ上がるように増大した。

「この感じは・・・・・」

　前にも何処かで・・・。　

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