起死回生の一撃なるか

偉大なる遠謀に

　包囲は完成しつつあった。

　このままでは基地内の部隊が出撃する前に壊滅させられてしまう。到着と再出撃の時間差を利用した

巧妙な各個撃破戦術と見えた。今までとは違い、効果的な戦術を労して本格的な攻めに転じたと思われ

る。

「しかし、裏を返せばそれだけ余裕が無くなって来たと言う事か・・・」

　機体の足元からも着弾の音が激しく響いている。

「やばいよこのままじゃ。今は私の力で弾道を曲げているけど、それもあんまり持たないよ」

　コクピットの横にあるパネルから見えるシルフにも流石に焦りが見える。余計な精霊力を使わない為

にその姿もすぐ消えたが、危機感はありありと伝わってくる。

「レイウス、こりゃあやばいの。サラマンダーも限界がきておる。このままでは良い的だがの、かと言

って撃って出れば海岸からの部隊に背後を取られて終わりだの」

　ドランク機も疲労が感じられる。隊員達もほとんどが発狂しないだけでもましなくらいに張り詰めた

モノが通信パネル越しに感じられる。

「基地に篭城と言う訳にもいきませんしね・・・・」

　基地に設置されていた砲台その他の武装達も、今はほぼ全滅と言った所。二、三台ほど残っていると

しても、弾幕にすらならない。

　頼みのオリジナル精霊達もすでに限界が訪れようとしている。もしこのまま精霊力場が切れてしまえ

ば、前から左から迫り来る弾丸に襲われ。白い部隊の襲撃で止めと言う相手の思い通りに運んでしまう

だろう。いくらチューンナップされたと言っても、耐久力は無限であり得ない。

「撃て撃て撃てい！！」

　ドランクの気合も今は虚しく響き渡る・・・。

「・・・・せめてあと一隊でもいれば・・・」

　左の海岸からの部隊が手に持った砲身が向けられ、シルフより再び警告が発せられる。

「ああっ、やばいよ。左からの・・・・・・あれ！？」

　基地より入電。

「敵海岸よりの増援部隊、次々と撃破されています。あ、今通信が入りました。我が軍の増援です、援

護するとの事」

「やったやったやったー♪」

　小躍りするシルフ。

「何だか解りませんが・・・。ドランク！！」

「お、おう。解った、任せとけい。とりゃとりゃとりゃとりゃ！！」

　ドランク機の全身から無数のミサイルが発射され、一瞬動きが止まった前方の白い部隊へと一斉に襲

い掛かる。

　そしてそれに応じるようにレイウス機が加速。土煙の中を一直線に引き絞られた矢の如く飛び出す。

　ぼけーっとしていた隊員達もドランクに怒鳴られて、再び戦意を取り戻し射撃を開始する。

　謀らずも不意打ちとなったそれらは、先程までのが嘘のように次々と敵機を貫き爆発していく。

「ここじゃい、ここが撃ち所！ありったけの弾を撃ち出せい！！」

　ドランクの叫びに応じるように全隊から更に弾丸が撃ち出され、雨交じりの突風のように辺り構わず

吹き荒ぶ。

　レイウスは構わず突き進む。ありったけの出力で。

　土煙の先に銀色の機体が見える。

「これからが本当の勝負です。始祖機の力見せてもらいますよ！」　

　両肩から両手に霊ブレードを取り出し、二本の緑色に発光する刀身を重ねるように前に突き出す。

　そして機体同士がぶつかり合うような派手な金属音が戦場に響き渡った。　

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