薄い遠吠え

果て無き要求

　暗い膨大なエネルギーが空間を削るように天へと立ち向かう。

　それは暗色、しかし鮮明で。黒い虹のように淡く発光している。ただ実際発せられる光はエネルギー

に比例するように膨大で、途方も無い闇筒が天を貫き建っているようにも思える。

　荒れ狂うような数秒間の奔流の後、散った闇は光の陰に安らかに消える。

「・・・・・・多分そうだとは思ってたけど・・・・くそ！」

　しかしその膨大な闇エネルギーを浴びて尚、白天使は何事も無かったかのように悠然と浮かんでいた。

大気に舞う光のカスが煌いて、幻想的な光景を為し。それが尚更夢遊感をかもし出していたが、紛れも

無い事実だと誇示するように、再び八つ帯から閃光が放たれる。

「無駄無駄無駄、無駄ですよそんなもの」

　ギリアムも皮肉に笑う。

「サタナキア！」

「・・・・ゲンカイ・・・ゲンカイ・・・・」

　辛うじて放たれる弱い闇と閃光は打ち消しあう。

「くっ、戦闘システム強制解除！」

「・・・・ゲンカイ・・・・ゲンカイ・・・」

「くあッ！？」

　不意に意識が引き擦り込まれるかのような、感覚がディアボロスに取り込まれるような感覚に襲われ

た。そして応じるかのようにディアボロスがどす黒く滲むような発光を開始する。

「さあ、足掻くのは止めなさい。ノヴァはサリアの贄になるが定めなのです。愚かしいですよ、アハハ

ハハハハハハハハ！」

　三度白天使より閃光が放たれ、ディアボロスに撃ち込まれる。その度に装甲のように覆われている霊

機を霧散して、剥ぎ取られるようにガラガラと崩れ去る。

「アハハハハ、ご自慢の鎧も無駄でしたね」

　何度も何度も閃光が放たれる中、ゼロライムは意識が希薄になっていくのを感じていた。

「・・・・・・・・・」

　意識を失うと言うよりは、誰かの中で一緒に感じているような、自分を第三者視点で見ているような

・・・・。

「アハハハハハ、貴方も大人しく消えなさい！！」

　白天使の胸元に構えた両掌の間に煌く光球が現出する。

「アハハハハハハハハハ」

　そして掌から弾き出されるように光球が真一直線にディアボロスのコクピット部分を狙う。

「ガアアアアアアアアアアアッ！！」

　しかしその光球は突如再稼動した、ディアボロスに容易く掴まれ。開いた口に取り込まれた。まるで

喰らうように。

　今や、ディアボロスの眼はギラギラと輝き、全身はどす黒いモノに覆われている。

「ゴアアアアアアアッ！！」

　嬉しそうに叫び声を上げながら、一瞬で白天使の眼前に静止した。

「まだ向かってくるのですか、アハハハハハハ。馬鹿な人です」

　しかし、陶酔しているギリアムは他者の変化等に気付く事も無く。

「今度は外しませんよ！」

　自らのミスで外したと思い込んだ光球を再び造り始めた。

　そして悪魔はそれを楽しそうに見ている。

　ゼロライムもぼんやりとディアボロスの視点で眺めている。

「ガアアアアッ！」

　そして無造作に振り上げた拳を白天使に叩きつけた、楽しそうに何度も何度も。

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