神々の黄昏

無限の灯火

「なああああああッ！？」

　黒弾と化したディアボロスの一撃をまともに喰らい、そのまま天へと押し返されるように吹き飛ばさ

れる白天使。　

「はああああああああッ！！」

　それにディアボロスの腕部ガトリングガンが怒涛の如く撃ち込まれる。

「神に逆らう痴れ者がッ！！」

　怒号と共に白天使の全身から放出された光で、無数の銃弾がかき消されていく。

「後悔するが良い！」

　反撃とばかりに今度は白天使の帯から無数の閃光が疾駆る。

「サタナキア！」

「・・・リョウカイ・・・」

　ディアボロスから滲み出る黒い影が、閃光と喰らい合うように打ち消される。

「なるほど・・・、その黒い機体・・・それがノヴァですか。アハハハハ、これは面白い」

「何を訳の解らない事を言っている！」

　再びブースターを全開させて疾空するディアボロス。

「どちらにしても、そんな霊機ではまともに動かせませんよ。愚かしいにも程がある、無知無恥無智！

アハハハハハハハハ」

　突き出した拳を簡単に片手で受け止められ、そのまま回転して投げ飛ばされる。ディアボロスは立ち

向かった加速を遥かに超えるスピードで、大地に突き刺さる。

「ぐああああああああッ！！！」

「・・・・・ダメージダイ・・・シュツリョクテイカ・・・ソンショウリツ２５・・」

　二体の精霊が守ってくれなければ、ショック死していたかも知れない。脳が先程の天空に置き忘れて

来たかのような錯覚を受け、酔ったように頭がぐらぐら、視界にモザイクがかかる。

　それでもゼロライムは必至に機体を立ち上がらせる。

　限界タイマーは５分を切った、しかし実際にはもう一分も霊機関の方がもたないだろう。電子が誘発

するように周りの大気にびりびりと放電が伝わる。

　全身に張り巡らされた霊機類はほとんどがスパークして、まともに動かない。驚く事にディアボロス

本体にはダメージらしいダメージは無い様子だったが。

「うう、気持ち悪い・・・・。でも、せめてもう一矢！」

　ゼロライムは必至に眼を開く、何とか白いモノを確認する事が出来た。

「双肩カノン、スタンバイ！」

「・・・・・リョウカイ・・・・」

　このまま無意味に殺されるよりは、微かな可能性を信じる。

　ロックオンカーソルが狙いを定め、無限の熱量が砲身から放出され、真一直線に白天使へと向かう。

「いけええええええええッ！！」

　基地から突然の通信。

「どうした！？何か問題でも起きたのか！」

「いえ、それが・・・・。レグス少尉へ本国より緊急通信が入りまして・・・」

　通信パネル越しに見える通信士も忙しそうに手を動かしている。こんな忙しい時に・・・・。

「通信だと！？・・・仕方無い、こちらに転送してくれ」

「ハッ！」

　程なくして、今度はパネルに見慣れた上官が映る。

「ルース准将、一体何事ですか？」

「何事！？それはこちらの台詞だ、状況を説明してくれ！」

「状況！？白天使ですよ、そちらが送ったのでは無いのですか！」

「馬鹿な！！一体乗っているのは誰だ！？」

「ギリアム大将ですよ！それが無差別に攻撃しているのです、至急援軍を送って下さい！我が隊も北方

の部隊もほぼ壊滅させられました！！」

「何だと！！どう言う事だ！？」

「それは私が聞きたい！！」

　どうも会話が噛み合わない。どうやらお互いに何処か重大な勘違いをしているらしい。そう考えると

少し落ちついて来た気がする。

「それでは、本国の指示では無いのですね？」

「ああ、ギリアム大将は謹慎のはずなのだ・・・・。それが・・・」

「それなら尚更、援軍を！」

「解った・・・、何とかする。ギリアム大将も位階に見合った魔力は持っているが、それでももう切れ

る頃合だ。それまで、しばらくは既存の部隊だけで何とかしてくれ・・・」

「承知しました・・・・」

　そう言い終わるまでも無く、ぷつりと通信が切れる。

「くっ、敵ながら今はあの黒い機体だけが頼りか・・・・」

　その時、再び切裂くような衝撃が響き渡り、目が焼ける程の光が空を走った。

「今度は何だッ！？」

　視界が再び光で遮られた。

BACK・ EXIT・ NEXT