残る者　消える者

執拗なる双閃

　単調な仕草に万変の理を乗せて、無造作に振り下ろされた拳から神経までズタズタにされそうな程の

衝撃が伝わる。機体越しの衝撃のはずなのに、あたかも自分自身が直に殴られているような気すらする。

　ギリアムは現状がまったく解らない。

「な、何故私が・・・・・」

　機体が沈めば打ち上げられ、左に薙げば右から打ち返され。何度も何度も繰り返す。

　光球もいつの間にか消え。何処かに飲み込まれたように、そして今も飲み込まれ続けているように。

光り輝く白天使もどす黒いモノに侵蝕されるようにじわじわ、じわじわと・・・。

「なんなのだ！！こんな事はあってはならないはずなんだ！！」

　喚きながら必至に操縦桿を動かしてみても、白天使はまったく応えない。

「精霊よ！貴様も何故応えない！？」

　搭載されているはずの光精霊第一種オリジンは初めから何も言わなかった。小パネルに映るのは淡い

光のみ。

「馬鹿な、完全なはずだ。神も完全に目覚め操れる、そのはずなのだ！なのに何故私に応えない、今に

なって動かないとはどういう事なのだ！！！？？？」

　叫んでも喚いても、応える者も答えも現れず。

「ガアアアアアアアアアッ！！」

　目の前には輝く目で睨む悪魔が。

　そして組んで振り上げた両腕が頭から一気に振り下ろされた。

「あがあああッ！！！」

　弾ける打撃音がいつまでも鼓膜に響いている。

「グアアアアアアアアアアッ！！！」

　黒い雄叫びと共に。

「・・・・・・・・・・」

　そして人は朽ち果てた。

「ぬおッ！？」

　大地が震え、大気も震える。地震と言うよりは空間震と言うような。耳も聴き取れない音にピリピリ

と痛む。サラマンダーの力では振動を緩和出来ないのが辛かった。

「大丈夫か、ドランク？」

「ああ、心配無いて。ま、ちいと耳が痛かったがの。それよりもイザリー・・」

「どうやら終わったようだ・・・・」

　ディアボロスの雄叫びも今は聴こえず。聴こえるものと言えば、緩やかに吹く風とそれに揺れる音く

らいのものだった。

「むう・・・・・・」

「心配か、ドランク」

「ん、いや、はよう撤退せねばの。油断して、基地の防衛砲の餌食にでもなれば洒落にもならんわい」

　突然イザリー機がドランク機を振り払う。

「おっ、どうしたんだのイザリー？？」

「私はもういい、早く行け。・・・・・それに私も心配なんだ、またレイウスみたいに・・・・」

「ん、解った。気をつけての、イザリー」

「そっちもな、ドランク。私のはレイウスから預かった機体だから、この程度では音を上げないよ」

　イザリー機は上半身のバーニアを器用に使い、よろけながらもしっかりと進んでいく。

「確かにレイウスも無茶しとったからの、さて」

　ドランク機も逆方向へとバーニアを吹かし始める。

「待っとれよ、ゼロライム」

　何より無事で居てくれる事を願いながら。

　装備を全て外した機体は軽やかに加速する。　

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