振り回される者

不揃いな共感者

「何遊んでいるのですか」

　小パネルのシルフがいつもの不機嫌そうな目で睨んでくる。

「そんなつもりは無いんだけどね・・・」

　加速が減退し、ようやく何とか言葉を発せられるようになった。それでも、身体にかかる重力にはと

ても慣れそうにも無い。

　体中からキシギシと軋む悲鳴が聴こえてきそうだった。

　飛ぶようにパネルの景色が左右に消えて行く。

「敵機射程に入ります」

　無口なサタナキアの代わりに、シルフがナビゲートしてくれるらしい。ロックオンカーソル内が拡大

され、そこには蒼と碧の機体が見える。

　そして蒼の機体をロックオン、下に機体までの距離が表示され数字が見る間に減っていく。

　ここら辺は全て精霊がやってくれるから楽だ。後はこの重圧さえ無ければ。

「腕部ガトリングガン！」

　黒い機体の篭手から手を円形に覆うように銃身が現れ、回転しながら特殊コーティングされた鉄鋼弾

を途切れなく放つ。

　無数の弾丸がさながらDNAの螺旋のように蒼の機体に降りかかる。

「ぬわッ！」

　レグス機を無数の弾痕が走る。

「くっ、新手か！」

　レグスは対峙していた碧の機体にソードライフルを射撃して、機体を旋回しロックオンを振り払うよ

うに碧と新手の両方を視認出来る場所に移動する。

「黒い・・・ディアボロス！」

　碧の機体を駆るイザリーも、突然の張り詰めた空気を切裂くように現れた闖入者に驚きを隠せない様

子。

「援護任せる」

「えッ、あッ、はい」

　驚きによる戸惑いも一瞬で振り払い、イザリーは数瞬遅れでレグス機を追う。出力を上げる動力機の

駆動音が激しくうねる。　　

　ゼロライム機ディアボロスは更に逃れようとする蒼い機体をガトリングガンで牽制する。

「うぬッ！これは拙いか」

　レグスの乗る蒼い機体に刻まれた弾痕からはどろどろと体液のようにオイル、伝導液等の液体が流れ

落ちている。すぐに動けなくなる程のダメージでは無いものの、徐々に動きから精彩さが欠け始めるだ

ろう。　　　

「レグス様、このままでは後１０分が駆動限界です」

　レグス機内のウンディーネも先ほどから警告を発し、何とか機動時間を延ばそうと健闘しているがそ

れもそう効果は無いだろう。　

「仕方無い、こちらから仕掛ける！」

　レグス機はディアボロスに向かいブースターを最大噴射させる。

「いつもいつも邪魔をしてくれる。この黒い奴めが！！」

「うわッ、こっちに来る！」

　ゼロライムは慌てて退避しようとするが、焦って上手く動かせない。

「つあッ！！」

　しかしレグス機はディアボロスの一歩手前でイザリー機の体当たりを喰らい、地面を回転しながら突

き飛ばされて行った。　　

「助かった・・・・・」

「大丈夫か！大丈夫ならすぐに離れろ。限界時間を越えるぞ！」

「わ、解りました。イザリー右将軍」

　ゼロライムは大急ぎでディアボロスを後衛に退避させる。稼動限界タイマーは５分を切っていた。

「覚悟してもらおう」

　そしてイザリーはゆっくりと銃身をレグス機へと向けた。　　　

BACK・ EXIT・ NEXT