大差無き攻防

戦況は混迷す

　発弾音と金属の擦れあう音で覆われる。

　戦時中はいつもこの音と共にあった。初陣では耳障りにも思ったが、今ではその音で敵味方まで区別

出来る。距離や機体数までもがだいたい予想が付くのだから、人間の感覚は思う以上に研ぎ澄ませれる

と言う事につくづく自分自身の事ながら驚かされる。

「蒼い震浪もここまでだ」

　イザリーは蒼いレグス機へ向けた銃機の引き金に指をかける。

「フ・・、それを油断と言うのだよ！」

　レグス機が突進してくる。オイル類を撒き散らしながら。

「無謀な！」

　イザリーは躊躇い無く引き金を引く。

　しかしレグス機はそれを無視するかのように、コクピットの位置を両手で守るようにしながら軌道を

変えず直進してくる。

「なッ、玉砕覚悟なのか！」

「砕かれるのはお前だけだ！」

　イザリーの眼前に今や骨組みだけに近い状態の腕が迫る。

「しまった！」

　しっかりと機体を掴まれ、ソードライフルの至近射撃を浴びせられる。

「うああああッ！」

　機体損傷を示すゲージがレッドラインを示し、警告音が鳴り響く。着弾の衝撃で機体が大きく振動す

る。

「やばい、やばいよお姉さん。もうちょっとで機体の中に届いちゃうよ」

　イザリー機コクピット内のパネルに移るシルフも珍しく焦った様子に見える。いくらオリジナル精霊

とは言え、至近距離での連続射撃を防げる程の力も、それを可能にする処理能力も霊機には無い。

「救援・・・も期待出来ないか」

　部下機達にも他を気にする余裕は無いだろう。いくら改良を繰り返しているとは言え、共和国側の汎

用機ウンディーネには今一歩及ばない。自ら闘う事でそれが良く解った。

「なら自分でやるしか無い！」

　イザリーは機体のバーニアを全て全開させる。

「何！！」

　そのエネルギーは輝く閃光となり、肩に付けられたバーニアからの噴射がレグス機のモニターを覆い

尽くす。

「ウンディーネ、遮光シェルターを！」

「承知しております」

　ウンディーネの反応の良さに失明を辛うじて免れたようだが、それでもホワイトアウトする視界を防

ぎようも無い。

　イザリー機もその隙を逃さず即座に離れる。

「くッ、油断しているのは私もか」

　二機の勝敗は未だつかない様子だった。　　　

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