儚き笑いと共に

迎え撃つ刃

　ここ数日の内に急ピッチで備え付けられた砲台達がずらりと居並ぶ。

　その光景は壮観としか言いようも無い程ではあったが、それに見た目ほどの効果があるかどうか、内

側から見る限りは如何にも疑わしい。

　どれも付け焼刃に過ぎないのは解っている。だが前回の戦闘でマリエルが乗る始祖機を始め、数機に

深刻なダメージを与えられたのは痛い。その穴を埋めるためにはどんなモノにでも縋りたい気分でもあ

った。

　本国からの救援と基地内の物資のおかげで何とか戦力は整ったものの、不安は過ぎる。

「レグス少尉、レーダーに反応がありました」

「解った、すぐに行こう。全機出撃準備を急がせろ！」

「ハッ！」

　自身もすぐ出せるようにしておいた機体に乗り込む。

「ウンディーネ、調子はどうかな？」

「私はいつでもいけます。少尉も頑張って下さいませ」

「勿論だ」

　レグスの愛機である蒼い機体はその言葉を裏付けるかのように、雄々しく立つ。反射した蒼い煌きが

霧散していく。輝くように纏う精霊力には一切の翳りは無かった。

　性能ならばどの機体にも引けは取らない。レグスは今までの実績を思い返し、ゆっくりとそれを自信

へと昇華させていく。心が震え出した時、それが発進の合図へ変わる。

「ウンディーネ、バルキリ―隊。打って出るぞ！水中専用機は砲台として使え！もう小細工は無用だ！」

　部下達の猛る咆哮が木霊する。

　そう、何一つとして敵軍に劣る所は無いのだ。

「基地前で陣形を組み、一斉射撃！」

「了解！！」

　進め！臆する要因など欠片も無い！

　レグスはもう一度心の中に叫びを込めた。

「二列横陣！！一斉射撃！」

　イザリーの檄に応じて帝国軍の二つの部隊は機敏に動き、瞬時に隊列を完成させる。

「ほっほう、流石は正規軍。鋭い動きをするの」

　ドランクも感心していた。何より彼女の存在が士気を大きく高めさせる。

「うむうむ、わしらは援護に回るからの。ゼロライムもまずは機体に慣れるのだの」

　ドランク隊も後衛から援護射撃を改良する。今回はゼロライムを除く全員がサラマンダーに搭乗して

いて、武装も中長距離ロングスナイパーライフルに変えられている。連射は出来ないものの、一撃の破

壊力も大きく、何より命中精度が高い。精霊感知遠望スコープ付きなので、更に命中しやすくなってい

る。

　勿論ギイじいさんカスタム仕様である。

「うーむ、まずは射撃戦だの」

　共和国側も基地前を旋回移動しながら銃弾を的確に打ち込んで来る。両軍の弾幕と食い合うように激

突する弾丸の所為ですでに肉眼で視認するには困難な程に視界が悪くなっている。

「そろそろ来るだろうの。よし、イザリー！」

「解っている。二列縦陣から鶴翼の陣へ。シルフィード隊は両端へ布陣、左右から来る敵を迎え撃て！」

「ハッ！！」

　再び一糸の乱れ無く、全機最低限の動きで布陣する。

「精霊の力を借りないステルス機・・・、でもそれも諸刃の剣だと言う事を思い知るといい」

　碧に塗装されたイザリー機も右方向に散開して行く。

「うーん、やっぱり上手く照準が・・・」

　その頃ゼロライムは予想通り第二の壁にぶち当たっていた。　　　　

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