無意味な場面

何度目かの憂鬱

「ん、待っておったのかの。はよう逃げいと言ったのにの」

「すいません」

　ドランクは帰還途中で一機だけ居たゼロライムと合流した。

「まあ、戦況を最後まで確認する者も必要だからの。さあ、とっとと逃げるぞい。不意をついたからと

行ってぼやぼやしてると追い付かれるかも知れんからの」

「はい」

　ゼロライム機はすぐさま反転し、ドランク機の後を追う。

「ほう、結構滑らかに動かすの。魔力が高い証拠じゃい」

「そうなのですか？」

「おう、精霊を仲介するとやはり若干命令が手足に伝わるのが遅くなるからの。魔力が高ければ高い程、

精霊に頼らなくて済む分、自由に動かせると言う訳だの」

　ドランク機は砂煙を立てながら進む。銃身を地面に突き立てながら移動しているので、ガリガリと少

し五月蝿い。こんな音にも慣れるものなんだなあとゼロライムは無意味に感心した。

「しかし、どうやってあんな近くまで気付かれずに移動出来たのですか？」

「ん、あれかの。簡単な事、精霊の力を使わず自分の魔力だけで動かせばいいのだの。精霊力を使わな

ければ、レーダーに引っかかる訳無いからの」

「ああ、なるほど・・・って魔力だけで！？」

「うむうむ、肉体の衰えは免れぬまでも、魔力等の精神力は逆に年月を得ればかえって冴えてくるもの

なのだの。まあ、ボケてしまえば流石に終わりだがの」

　ドランクはいつも通り豪快に笑う。何があってもいつも通りなのが、実は一番凄いのではないかと、

ゼロライムは密かに思っていた。

　ドックへ着くなり、急いで黒い機体のコクピットのハッチが開けられた。中にはぐったりとシートに

もたれかかっているレイウス。

「すぐに医務室へ！」

　すでに連絡を受け待機していた救護班が応急処置をしながら、すぐさま医務室へ連れて行く。

「一体何があったのかの・・・・」

　ドランクは腕組みしながらそれを見送る。

「うーん、コクピットの中を見たのじゃが・・・。変わった所は見えなかったしのう・・・・。あれに

付けられた精霊は元から訳が解らんやつじゃしな・・・」

　ギイじいさんも不可解な表情を隠せない。

「いきなり機体が止まって、レイウスとも連絡を取れなくなったと言われてものう。そもそもこの機体

は特別製のようじゃからの・・・、何とも解らんのじゃ・・・。ん？」

「さっさと機体を運ぶのだ」

「そう、時間は無駄にするべきではない」

　いつの間に現れたのか、二人の技師長が直属の部下達に指示を下していた。

「やはり、まだ問題点は多いようだな、ガウェン」

「うむ、まあそれは仕方あるまい、フォーウェン」

　そしてあっという間に機体と共に消えて行く。

「何じゃったんじゃ？？」

「さあ、まあ救護班からの連絡を待つかの」

「そうじゃな」

　ドランクとギイじいさんはとにかく今は余計な事は気にしない事にした。

　後には忙しそうに動く整備兵の姿だけが残った。　　　　　　

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