優越者と劣等感

深遠なる恐怖

「レグス隊帰還されました」

「整備兵回せ」

　蒼い機体を先頭に十数機がドッグに入る。共和国軍汎用型霊機ウンディーネ。本来水中戦用の試作機

を改修した、共和国初の汎用型霊機。突出した特徴は無いがトータルバランスに優れ、あらゆる状況に

対応出来る・・・・もっとも、共感者の腕次第でもあるが。

　蒼い機体は特に白兵戦用に特化したレグス少尉専用機でもあり、霊機には特別に水精霊第三種ウンデ

ィーネのオリジナルが使われている。

「少尉、お疲れ様です。上層部も期待以上の戦果に満足しているみたいです」

「ああ、流石にオリジナルを使った機体はいいな。反応速度もコピーとは違う。その分身体に負担がか

かるのが辛いが」

「ふふ、少尉もご苦労なさいますね」

「ああ、なまじ魔力が高いのも考えものだ」

　少尉と女性士官は談笑しながら司令室へ向かう。

「通信の傍受によりますと。少尉の事を何でも帝国側では蒼い震浪とか言われているようですよ」

「蒼い震浪？それはそれは大層な呼称だな」

「異名なんてそんなものですよ」

　少尉は苦笑しながら士官の表情を眺めていた。

　それを見ながら蒼い機体が静かに震えているように思えた。

　

「ウィル左将軍、演習中の第７機兵団が壊滅したとの報告がたったいま！」

「何だと！まさかまた」

「ハッ、蒼い震浪が現れたようです」

「新型と言えど十数機にこれほどやられるとは・・・。それほど我が軍との技術差があると言うのか」

　ウィルは苛立ちを隠せないように、常に動き回っている。落ち着き無く、広い部屋の中を狭い範囲で

うろうろ、うろうろと。

　これで帝国は第二機兵団から始まって、第４、第７と三機兵団を失った事になる。

　苛立ちが頭痛に変わるのも、このままでは時間の問題な気がする。

「あの蒼い奴を何とか出来ないものか・・・・。たかだか一機にこれほどの損害を与えられるとは・・」

「シルフィードとサラマンダーの改良を急がせておりますが」

「うむ、今は防備を固めて時期を待つしかあるまい。暫く演習は控える、機兵団たちも防衛に当たらせ

ろ。孤立する事は避けるように伝えろ」

「ハッ」

　オペレーターは各地に指令を伝達する。そして、左将軍に解らぬようある所へもひっそりと。

「それからドランクとレイウスに出頭するように伝えろ。後新兵達から何人か連れてくるように」

「新兵をですか？」

「そうだ」

「・・・・・・了解致しました」

　オペレーターは静かにコンソールに指を走らせた。　　　　

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