死神の憂鬱７

取り返しのつかない何か

　疾空していると少し先に同じく翔けている者を見かけた。

　ここで自由に飛んでいると言う事は同じバイトか本職の死神さんに違いない。

　軽く会釈をするとわざわざ止まって話し掛けてくれた。

「君は・・・・・バイトですね。見ない顔です」

「はい、バイトです」

「大変ですねえ。はっきり言ってこんなバイトは割りにあいませんからねえ。成果は如何なものですか

ね？」

「はあ・・・こんな感じなのですが」

　懐から件の石を取り出す。

「おやおや、これはまあ貧乏くじを引きましたねえ・・・。まあ、今は何処も景気が悪いですからね。

ここ百年辺りさっぱり人間の質が落ちましたから」

「そうなのですかあ・・・、でも僕のはその中でも最低ラインだと思うのですが・・」

「ええ、そうですね。確かに良い方では無いです。ですが、そう悪い方でも無いですよ」

「エッ、そうなのですか？？」

「最近は誰しもそんな感じですよ・・・。まったくストレスが溜まると言ったら無いですよ。もう少し

景気の良い仕事が出来たら、管理職に栄転したりも考えられるのですが・・・・。こんな質の悪い石ば

かりではむしろマイナスですよ・・・」

　そう言いながら本死神さんは、懐から似たような石をごろごろと出して見せてくれる。

「まあ稀に宝石になってくれる人もいるのですがねえ。まあ、それでも水晶かアメジスト辺りがせいぜ

いですねえ。ダイヤ何てとんと見かけませんし、そんな景気の良い話もまったく聞きませんよ最近は」

「はあ・・・、苦労なさってるのですね・・・」

「ええ、それでも絶対に必要な仕事ですからね。仕方ないのですが、まあ君も解ったら死神目指すのは

止めた方が良いですよ。今は死神冬の時代ですからねえ・・・いやはや世知辛い世知辛い」

　そう言って本死神さんはひゅるりと飛び巣立って行かれた。

「そうか・・・・バイトだけじゃあ無かったんだなあ・・・」

　正に救いようが無い。そう思うと涙も滲んできた。

　魂のエスコートって言う大事な大事な仕事何だけどなあ・・・。そう言えば大事な割に地位も低めだ

し、中年サラリーマンにも似た悲哀があるのがまた物悲しい・・。

　罰則は厳しい事この上無いし、とか色々と考えると更に陰鬱になってきた。

　そりゃ、自然神も荒れ狂いたくなるもんだ。

　大地の震えを大気越しに感じつつ、所詮人間と一蓮托生・・・・、そんな言葉が脳裏をひたすらに過

ぎった。

　そんなある冬の日。

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