迫害の９使徒

決意の変革再変革

　「あああ・・・・」

　　両肩を掴まれ正面を強制的に向かされる。それでも顔だけでも横を向いて、必至に抵抗をする。僕は

　諦めが悪いのですよこれが。

　　しかしそれも儚き抵抗で両頬をがっしりと掴まれて、ぎりぎりと向きを変えられる。

　「あああ・・・・・」

　　絶望の溜息と共に僕が見たモノは・・・・・何の事は無いいつもの真弓でした。

　「何だ、期待して損した」

　　等とブーたれるまでは良かったのですが。僕が意識を失い欠けたのはその次に発せられた恐るべき台

　詞と表情だったのです。人間嫌な予感は当たるものでありんす・・・。

　「どうしたの、木城くん？」

　「・・・・・あがががががががががが・・・・・」

　「どこか悪いの？」

　「・・・・・・・・・あ、あああああああ・・・・・」

　「何が言いたい！・・・あ、いやいや。何がおっしゃりたいのですかしら、おほほほほ」

　　時折、やはり無理があるのか口調が更におかしくなるものの。紛れも無く、それは所謂女の子女の子

　した口調と表情と声とその他もろもろそれっぽいモノモノだった。

　「はっ！」

　　僕は慌てて真弓を後方４５度から前方７６度辺りまでかけて改めて観察したのでした。流石に触る訳

　には参りませんので、判断が難しいのですが。見た目には明らかにあの真弓でした・・・・あああ・・

　・・・。

　　そんな僕を真弓は不思議そうな顔で見ている。

　「あああ・・・はっ！」

　「今度はどうしたの？」

　「いやいや、貴方はもしや伝説に聴く真弓の双子の妹だか姉だか何だかでは・・・・・？」

　「木城くんも知ってる通り、私は一人っ子です」

　「あわわわわわわわ・・・・・・・・・」

　　思わず状態を仰け反らしてブリッジ状態にまで追い込まれながらも、僕は何とかその状態のまま横に

　転がり脱出を試みたのですが・・・。

　「待てい！あっ、いえ・・お待ちになって」

　「ぐぇ」

　　と簡単に引き戻されました。

　「なんで逃げるの？」

　　「ん、いや、なんと言いますか・・・・吃驚して」

　「・・・変かな？」

　「いや、変じゃなくて・・・。似合っていると言うか・・・・だから余計に吃驚したと言うか・・」

　「え・・・・・」

　　見る間に真っ赤になった真弓はそのまま校舎へ走り去ってしまいました。真弓も元々女の子っぽい照

　れ屋さんなので、女の子っぽい仕草とかは不思議な程似合うのだけど。真弓が真弓で無いような、よう

　するに頭がパニックを起こしております。現状に適応出来ないように。

　「こういう所は真弓のままだ・・・・」　　　

　　なので、こういう所を見ると安心するような。

　「・・・・・」

　　取り合えず、僕も校舎に入ったのでした。
　

　　それから不思議な事に何事も無く過ぎました。

　　と言うのも、赤司ぐらいならともかく。僕以外の誰もが真弓の変化を当たり前のように受け止め、何

　事も無かったかのようにいつも通りに真弓と接するのです。だから逆に僕が可笑しくなったかのように

　錯覚する一日でした。

　　訳が解らないので、溺れる者は藁をも・・・な感じで近くに居た赤司に聞いてみると。

　「ん、まゆみンか？いつも通りじゃないか、頭でも食ったのかみつふさン」

　　おいおい、打ったのかだろ。突っ込みを入れつつ、こいつでは当てにならない事甚だし過ぎるので、

　狗引に聞いてみると。

　「ん、何言ってるの？帰って寝てた方がいいんじゃないの」

　　等とばっさりと切り捨てられ。

　「怪しいですねえ・・・。何が怪しいってその寝癖ですよ、いつもよりも角度が２度ほど寝ています。

　さては枕でも変えましたね。まったく怪しい、怪しい限りですねえ。コカとペプシだけが何故コーラを

　作れるのか？くらいに怪しいですねえ」

　　と溝口は所詮話にもならなくて。

　「うふふ、ふふふふふふふ」

　　何処かにトリップしているめぐタンには尚更声何かかけられなくて。

　　あげくの果てには。

　「ん、何か違うって・・どういう事？？」

　　高見さんにまで変な顔をされてしまう始末。

　「・・・・そんなものだ」

　　ちなみに特別出演平校長はいつも通り悟った台詞でキメていかれました。

　「一体何がどうなったの！教えて神様へるぷみー！！」

　　と帰り道大声を上げると

　「ヒソヒソヒソ・・・・また木城さんとこの・・ヒソヒソ」

　「あそこは・・・ヒソヒソ・・だから・・・ヒソヒソヒソ」

　　夕食のおかず買いのおばちゃん達にまたしても変な同情をされてしまい。もう、僕に残された道は全

　てから逃避する事だけでした。

　　なので、疑問は忘れてしっかり夕食を摂ってテレビで大笑いして、結局いつも通りに眠る事にします

　・・・・ソーメン。ただ、眠りが若干浅かった気がします・・・・近所に出没する野良鶏の。
　

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