濃くとまろやかさ

ポテトスープはとこしえに

　　ポテトスープ・・・それは奥が深く濃厚で。こう飲んでやったぞと言う充足感をかもし出す、ポター

　ジュなスープである。あのとろとろとした口当たりは決してコンソメでは味わえまい・・。

　　それは何故か！？結論から言えばポテトだからである。

　　これに比類する傑物としてポテトチップがある。フライドポテトも捨て難い。

　　ようするにポテトなのである！ポテトこそ食の都であり、万里の長城にも匹敵する息の長い品なので

　ある。

　　だからと言って、この物語とはあまり関係無い。

　「ふぃーっ、やはり朝はスープってのも良いねえ」

　「そうだな、アレだなアレ。うんうん、ソレって言うのも中々良いものだ。きちんとそうなる理由も頷

　けるってもんだ」

　　父の言葉から察するに、お約束と言う事なのだろう。慣れない人は不自然な会話でも、通じ合えるの

　が家族・・ひいては親子と言うもの、多分。いや変な親子だと思いたく無いので、いちいち理由もつけ

　たくなるってもんですよ。

　「じゃあ今日は父さんが片付けるから。褌総、お前は即座に学校へ行きなさい。そろそろ行かないと当

　然のハプニングがいくつ襲い来るか解らないのだから」

　　父よ・・・・その言葉、本当とは言え。人から言われると尚更哀しくなるよ・・・。

　「解った、じゃあ行って来る」

　　他にする事がある訳でも無い僕は、忠告に従い大人しく外へと歩み出したのでした。へもへもかしこ。

　「ふあ～あ」

　　僕にとっては当たり前の時間だとは言え、まだまだ早い時間。一般人は今ごろのんびりご飯でも食べ

　て身支度を整えている事でしょう。

　　真弓の変化からすでに数日が過ぎ、僕も何となく慣れつつもある。何故だか解らないけれど、変に思

　っているのは僕一人だけらしいし、それなら一人だけいつまでも驚いていてもしょうが無い。

　　まあ、僕的にはぁ～可愛いからそれでいいしぃ～、ってな感じで落ち着いたのであります。

　　そのうち真弓に聞きたいとは思っとりますけども。変わってから一段と照れ度が増したようで、ちょ

　っとでも誉めようものなら超特急で駆け去ってしまうので中々に難しいのです。

　「ん～？？」

　　不思議な事に今日は危なげ無く学校の前の坂まで到達してしまいました。これがどれだけ不思議かと

　言うと、全国のスーパー、コンビニの豆腐がいつのまにか杏仁豆腐に摩り替わって。尚且つそれに誰も

　気付かず湯豆腐にして美味しくいただいているくらいなのです、当社比。

　「ほけ～～」

　　あんまり早く来ても学校ほどやる事が無いとこも無いので、坂に腰掛けて海を眺める事にしました。

　ここは交通量も少なく、この時間車なんてほとんど通らない歩行者天国、極楽地獄なので道の真中に座

　します。

　　そして幾許かの時が過ぎ・・・・。

　「あれ、木城くん？」

　「ん、高見さん」

　　慌てて立ち上がって、照れ隠しにお尻の汚れを掃う。何故なら、ここは坂で、高見さんは僕の位置よ

　り上の位置で尚且つスカートで・・・・むにゃむにゃ・・。と、まあこんな訳でして。相手が気付かな

　くてもしてはいけない事があるもので・・・。

　「ん、どうしたの？」

　「ううん、何でも無いよ。高見さんが居るって事はそろそろ丁度良い時間って事かな」

　「時間潰してたの？」

　「うん、今日は何故か普通に来れてしまって。嬉しいんだか悲しいんだか、はは」

　　思わず照れ笑い。

　「ふうん、それなら私の家に来れば良かったのに」

　「え！？」

　「ん、一人で居ても退屈だよね？」

　「え、いやまあそうなんだけど」

　　高見さんも時々吃驚するような事を言ってくれる。しかも普通に言っているのだから、一人照れてる

　僕が変に見えるのですよ。まあ、今更変の一つや二つ増えた所で・・・・フッ。

　「んー、とりあえず学校いこ。校舎まで競争ね、ゴー♪」

　　そう言っていきなり駆け出す高見さん。慌てて後を追う僕。

　「ははは、待て待て～」

　「ウフフ、捕まえてごらんなさい」

　　等と言う事は勿論無く、本気で競争したのでした。坂の全力疾走は心臓が張り裂けそうです、苦しい。

　しかも高見さんはかなり速い、恐ろしい程に。

　「負けた・・・・」

　「ふふ、木城くんの負けだから今度は私も遊びに連れて行ってね。約束ね」

　　そして、もっと鍛えなきゃ駄目よと高見さんは校舎に消えたのでした。

　「ぜーぜーぜー・・・・え？？」

　　等とよく考えれる頃には、登校する生徒に変な目線を送られる最中でした。これで僕の変人度もレベ

　ルアップ、正面玄関前で悶える男になったのでした。

　　そして遊びに連れて行って、と言う事は。多分奢れって事なのでしょう。

　　でも嬉しいからいいか。人間そんなもの、気分は奢る相手に大きく作用されますです。
　

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