前もって知らされてたら驚かないですね

驚愕は突然に

　　どうにも真弓の事が引っ掛かっている。気心の知れた仲だけに自分の知らないとこで急激に変わって

　しまうと、僕だけ置いていかれてしまうような、そんなどうしようもない焦燥感にも似たものを感じる。

　　言葉に出来ないと言うより、現す言葉が無い感情の方がきっと多いのだろうと思う。

　　そんな午後の授業。

　「・・・・・・！！！」

　「ガフッ！？」

　　柊先生からチョークの投撃を食らう。何でも全日本チョーク投げ選手権（参加は現役教師のみ）個人

　の部で毎年ベスト３に入る腕前だとか何とか。僕はとてもそれは税金の無駄遣いだと思う。ちなみに国

　家試験もあるらしい。

　　そして黒板にはすらさらと、

　「ちゃんと授業聞いてね。先生悲しくなるから、うふ」

　　と記されました。

　　そして僕は今日の大笑い賞を獲得、私は笑われ者です、と書かれた見事で豪華なタスキの一日使用権

　を得たのでした。このタスキをかけた者は園児から後ろ指を指されると言う曰くつきのものなので、今

　日の帰りと明日の登校時はより一層気を引き締めねばなるまい。

　「ふあ～、何とか終わったなあ・・・でも、あいつ本当にどうしたんだろ」

　「ん、どうかしたの木城くん？」

　「えッ、いやめぐタン何でも無いよ」

　「嘘よ、嘘に決まってるわ。私に隠し事なんて・・・きっと信じられない淫らな行為に現を抜かしてた

　り、泥沼でのたうちまわったりしてるのね。酷いッ、私はやっぱり遊びだったのね！」

　　そう言って、おいおい泣き出すめぐタン・・。白い目を向けられる僕・・・・。皆、毎度の事なのに

　何で気付かないんだよ。その度に相変わらず僕の好感度ランキングは下がっていくのです、トホホ。

　「わ、悪かったよ。ごめん、めぐタン・・・・・。実はね・・・・」

　「うん、なになに？」

　　ころっと笑顔で聞くめぐタン。女って魔性だよね・・・・。

　「うん、えっといやさ・・・、真弓の奴が最近変わったからおかしいなって・・・」

　「ん、坂下さんならいつも通りじゃない」

　「え、でも何か妙に女の子女の子してるって言うか・・・」

　「ん、坂下さんって女の子らしいよ。そう言えば、木城くんの前だと緊張してちょっとそっけない言葉

　使いになってたかも知れないけど」

　　めぐタンはそう思い出したように告げた。

　「へ、じゃあ元々僕の前だと変だったって訳？」

　「うん、何だか緊張していたんじゃないかしら」

　「・・・・・・・・・・・・・」

　　そうか・・・、だったら皆何とも思わないはずだよ。そう言えば、思い当たる節が無い事も・・・。

　「ん、どうしたの？・・・・そっか・・・二人の時間を静かに楽しむ事って大事だもんね。ああ、世界

　に私達二人だけなんて・・何て素晴らしいのかしら・・・。地球も全部私のモノ・・・、そして二人は

　・・・・うふふうふふふふふふふ」

　「はッ！」

　　僕までトリップしてしまう所でした。危うい危うい。そうして、いつも通りカニ歩きでその場を脱出

　しました。後三分遅かったら・・・・、あのまま取り込まれていたのかも知れない・・。

　　でも、そうだったのか・・・・。気付かない僕の方が変だったかも知れない。

　

　　しかし、本当の驚愕は帰宅してから起こったのです。

　「褌総・・・・、父さんあれだあれ、男と女がこう一つ屋根の下って・・・・」

　「もしかして、前言ってた再婚！？」

　「ああ、それそれ」

　「本気で！！？冗談で無く！！？」

　「うむ」

　　本気だ・・・この顔は本気だ・・・・。

　「この・・・ピンクな親父め！！」

　「いや、俺はシックな色が好きだぞ」

　　取り合えず、僕の人生まだまだ波乱万丈みたいです・・・。　

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