センチメンタルな日もあるさ

まとわりまとわり

　「うーーーん」

　　どうにも今日は朝から誰かの視線を感じる。

　「はあッ！」

　　しかして気合を入れて振り返って見ても、そこには誰もいない。

　「おかしいなあ・・・、気のせいかなあ・・・」

　　赤司かとも思ったけど、赤司と一緒にいる時も感じたから違うだろうし。他にこんな事をする奴と言

　ば溝口・・・、でもあれは今日も行方知れずだったし。

　「うーん、まあ飯にしようか」

　　赤司は珍しく弁当（エノキダケのメレンゲ風味醤油バター炒め越前風）持参で、今日は俺一人食堂へ。

　一人で気楽に食べれるなんて、何て幸せ何だろう。

　　「はうッ！？」

　　そんな至福な時間を味わうこの時にも、やはり例の視線をばっちりと感じる。それはもうビリビリと

　電流を感じるくらいに。しかも朝からだんだん強くなっている気がする。このままだと、夕暮れ頃には

　自然発火するぐらいなレベルに変わっている事だろう。

　「じーーーーーーーッ」

　　ほら、もう音に出てる。

　　音？・・・・・・・声？？

　「むむッ！」

　　バレーの時間差攻撃かＡクイック並にフェイントをかけて揺さぶり、勢い良く振り向いた。

　「あ・・・・・」

　　するとばっちりと合う目と目。申し合わせたように合うのは何故だろう。人生なんでかこんな事が良

　くあったりするから不思議。

　　そしてそこにおわしたのは。

　「んま、真弓！？」

　「あッ！？」

　　カメレオンのように周囲に同化した真弓の姿。忍者も真っ青でしょう。

　「何してるんだ、真弓・・・・・」

　「えッ、いや、何でもありませんことよ。おほほほほほほほほほ」

　　さっさと迷彩服を脱いで前に座る真弓。何ていう手際の良さだろう、とにもかくにも必至に練習した

　に違い無い。

　「真弓・・・・・、努力する事は尊いと言う事にしておこう・・・・」

　　知らず涙が頬をほろり。ああ、君の努力は報われたのか・・・。

　「えっと、いやその。何ていうのか・・・・。昨日遊びに行ったんだろ？」

　「ん、ああ。ジェットコースター地に行ったなあ」

　　前の口調にいきなり戻り、何だかホッとしたのと困惑が交じり合ったものが、じわじわと込上げて来

　る。懐かしいような、もっとそれでいて欲しかったような・・・・。　　　

　　矛盾しているようで、妙に納得できる。いつもそんな感じで・・・。

　「そうか・・・。楽しかった？」

　「え、うん。まあ、結局何も見ずに帰ったけど。結構楽しかった・・かな」

　「やっぱり・・・・さんが居たから・・・・」

　「ん？」

　「あッ、いえ。何でもありません事よ」

　　またも突然に口調が変わり、何故か慌てながら去って行く、真弓。

　「どうしたんだ・・・・最近、やっぱり変だよな・・・・」

　　そして聞き取れなかったあの言葉・・・、いったい何て言ったんだろう。

　　色んな事が妙に気になり始めて、俺はしばらく何も出来ずに。そのままぼんやりとしていた。

　　視線が外れた事も、不思議に少し寂しい。そんな午後だった。

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