不可思議決心いとおかし

のんびり夕暮れ飲んだくれ

　　太陽が疲れて眠りに入る前、世界が朱に暮れる頃。僕らも楽しみ疲れ満載で、のんびり帰路へと着く

　のでした。

　「くっっはあ～。今日は思いっきり遊んだなあ」

　　背伸びすると少しだけ身長が伸びたような気がする。目線が上がるとより多くのモノが見れるのかな。

　「ああ、今日は久々に遊んだな」

　　真弓と一緒に歩くのも暫くぶりで、何だか凄く新鮮と言うかそんな気もする春の夕暮れ。

　　虫の音も聴こえなくトンボも飛んでおらず、暖かいけれど少し寂しい、そんな春の夕暮れ。

　「今日は赤司がちょこっと登場しただけだったし、こんな日もあるんだなあ」

　「そ、そうだな。ふ、ふた、二人きりだった・・・し」

　「ふほほ、今日は真弓を満喫した日だな。真弓日和だ」

　「な・・・・・・何を言ってる！？ひ、人が聞いたら誤解するだろ！」

　「おや、そうかね？」

　「そ、そう言う・・そ、そ、そ・・・・・」

　　真弓は夕焼けよりも真っ赤になって、正にしどろもどろ。これ以上しどろもどろに相応しい動作も無

　いだろう。もう、しどろもどろと言うよりも。もどろもどろくらいは行っている感じだ。ひょっとした

　ら、しどもどしどもろろにすら届いているかも知れない。恐るべし真弓。

　「ともかく、違うからなッ！」

　「はいはい、解ってますって」

　「ううう・・・・いつもそれが怪しいんだ」

　　口篭もる照れ屋さんな真弓。弓道部の後輩にでも見せたい姿だが、彼女の名誉の為に伏せておきまし

　ょう、クフフ。

　「でも、そう言えば最初から最後まで二人で遊んだって言うのは初めてかもなあ」

　「ん？ああ、そうかも知れないな。いつも誰かしら居たから」

　「うんうん、だから僕は自分に変人引力があるのでは無いかと言う仮説を立てたりしたのだよ」

　「変人引力？？・・・・ぷっ、はははははは。確かにそうかもな」

　「何ッ？そう言う時は否定するのが人情だろうがちきしょうめ！」

　「はは、悪い悪い。でも木城が変な事言うからだよ」

　「クッ、僕には仮説すら満足に立てられないのか」

　　心底可笑しそうに腹を抱えて笑う真弓。

　　くうっ、オアシスにすら笑われるとは。結構真面目に考えていると言うのに。恨めしいので、その思

　いを全て視線に込めてみる。これが最後の切り札だ！

　「ははははは。ん、何だ変な顔して？」

　　まったく効果無いけれども。

　「いや、いいさいいさ」

　「まあ、拗ねるな拗ねるな」

　「へいへい、拗ねてませんって」

　　そんな風にして、のんびりと街路を歩き、時折車のヘッドライトがちらちらと照らして行く。

　　まだ明るいけれど、念のためと言うのも大事だと思う。

　「あっ、木城くん！」

　「あっ、高見さん！」

　　突然のぼんやりを打ち消す良く通る声は、何と高見さんなのでした。

　「ん、あれ？坂下さんも一緒だー」

　「うん、今日は真弓と遊びにね」

　「そうなんだ～。仲良いんだね」

　「いやいや、何と言っても心のオアシスですから」

　「オアシス？？」

　「いえいえ、こちらの話ですよ」

　「また、変な事ばかり言ってるし～」

　　等と暫くお話し致しました。いやいや、やっぱり心が和みます。

　「あ、もう着いちゃった。じゃあまた学校でね～」

　「じゃあ、また～」

　「坂下さんもまたね～」

　「ああ、またな」

　　そのまま途中で分かれ道まで一緒に歩きました。何故か口数の減った真弓と共に。

　「そういや、どうしたんだ真弓。急に静かになって？」　

　「ん、いや何でも無いよ。可愛いよね、高見さん」

　「うんうん可愛いねえ。和みの化身と呼ぼう」

　「そうか・・・・やはり、ああいう風に・・・。・・・うん、よし決めた！」

　「へ？」

　「決めたぞ、私は！」

　　そう言うといきなり真弓はすたこらさささと彼方へと消えて行きました。

　「え？・・・・・え？」

　　後に一人残された僕はただぽつねんと立ち尽くすのみでした。

　　ただもけらもけらと鶏の遠吠えが聴こえて来たのを覚えております。
　

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