式って無意味に長いよね

静謐と聖櫃は無縁である

　　体育館へ入ると、もうすでにほぼ全員が集まっていた。

　　一学年に７クラス。一クラスに約４０人、合わせて約８４０人の面々に先生方割と多数が加わればそ

　れはもう壮観な光景になる。ちなみクラスはＡ、Ｂ、Ｃ、Ｄ、Ｅ、Ｆ、Ｘになる。

　　最後のＸについては賛否両論公私論共に多数あるが。初代教頭辺りがＡから始まってＸ・・・すなわ

　ち無限に旅立ち羽ばたくのだよ、と言ったからという説が今のところ最有力だともっぱらの噂だ。

　　つまりはそんなくだらない噂が飛び交うほどに概ね平和だという事なのだ。

　「みつふさン、この空間に４００人以上もの女の子と同居しているというのは考えるだけで興奮するに

　相応しい出来事と思わないかね。だがしかし・・・そんなものは真の魅力を理解出来ぬものの戯言なの

　だよ・・・無知とは哀しい生き物よのう・・・」

　　お前が哀しいよ・・・・。

　　そんな遠い眼してる奴は放っておいて自分の持ち場に付く。

　　背の順だと妙な諍いが絶えないので、ここでは出席順に並ぶ事になっている。その為にＨＲを先にや

　るのかもなあと新たな仮説で例の論を補強しておく。いや、無論意味は無い。

　　そして僕はいつも通り順番を間違えてあたふたと入れ替わる。その過程でめぐタンと眼が合った。彼

　女は薄ら笑いを浮かべていた。

　　そして僕はいつも通りに並び変わる事に足を踏まれる。

　「みつふさン、ナイスガッツ！」

　　煩いよ。

　　そうして静けさの中仰々しく始業式が行われる。

　　何で式なんて一々やるのだろう。戦争前の軍隊教育の名残かな・・・？？

　　まあ、この学校は色々やたら簡略化されているので有名だから。校長のあいさつ三分に校歌斉唱と教

　頭のちょっといい話で終わるんだけども。

　「校長先生のあいさつ」

　　マイク越しにやたらハスキーな声を発してるのが宮前（ミヤマエ）教頭。女の先生で歳も確か３０

　半ばとの噂。教頭だけでなくてこの学校は女の先生も多い、しかも若め。

　　これは校長の趣味だと言う説が有力である。まあこんだけでかい学校なら教師数も多い訳で、そうな

　ると当然女の先生も多い事になる訳だけども。

　　そうしてほっそりとした長身の男がステージに上がる。

　　長髪黒髪長身のこの人が我らが平　雅翳（タイラ　マサカゲ）校長。御年２８歳。甘いマスクとク

　ールを地で行く物腰に生徒の信頼も厚い。実はお笑い好きだという事は公然の秘密だ。

　　名前の通り元は平家のお偉いさんの家系だとも言われ、かなりの権力を掌握しており政治家連中も顎

　でこき使えるとか色んな噂があるが全てはベールに包まれている。

　　とにもかくにも噂と説の多い土地柄なのであります。

　　とか何とか思ってる間にスピーチも終わり、涼しげな笑みと黄色い声と共にステージを下りていく。

　まったく、何をやっても様になる人だ。

　　ふと見ると、赤司が何故か悔しがっていた。奴は行動にすぐ出るので正午と共に笑っていいともだ並

　に良く解る。

　　そうして始業式は滞りなく終わる。教頭の今日のお話は女性のお肌は今から大切にと言う真にありが

　たい内容でした。

　　この何処かに高見さんも居たんだよな・・・。

　「ん、どうしたみつふさン。キョロキョロして？」

　「いや何でも無いよ」

　「では時は金なり。さっさと帰ろうぜ」

　　そう言って赤司はスキップで出て行った。今日は鞄も持ってないからそのまま帰れる。

　「よう、木城。相変わらず藤狩と一緒かあ・・・大変だなあお前も・・・」

　　この他人事だと思ってしみじみと言ってくれる奴は、坂下　真弓（サカシタ　マユミ）。姉御肌な姉

　御だ。ちなみに女性の身体的特徴が小ぶりだという事を気にしておられる。

　「おい、今何か良からぬ考えを抱いて無いだろうな・・・」

　「滅相もございません」

　「お前は何処か怪しいんだいつも」

　「失礼な。そんな奴は赤司一人で間に合ってるよ」

　「そりゃそうだ」

　　こうして笑う事で女の子だと判明する訳だ、うんうん。

　「お前・・・・また・・・」

　　勘の鋭い女は敬遠されがちだぞ真弓よ。

　「真弓はこれから部活かい？」

　「ん、いーや今日は休養だよ。弓を引っ張るだけじゃなくて、たまには休養も修行の内♪」

　「ふーん、じゃあ例の・・・・」　

　「そう。恒例のやつな。木城も来るか？」

　「ん、遠慮しとく。流石にあの場に一人で居られない」

　「はは、まあそうだよな。じゃあ、また明日」

　　真弓はシュタと手を上げてから部活仲間と出て行った。これから女だらけのカラオケ大会だろうて。

　　僕も後を追うように流れに沿って退館する。

　　またこれからあの生活が始まる。舞い落ちる桜と共に。　

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