いついかなる時もその存在は

振り返れば奴ばかり

　　そして次の日の朝、昇降口にて。

　「あっ、おはよー木城くん」

　「おはよー、高見さん」

　　爽やかな朝だなあ。溝を避けて水溜りにはまると言うありがちな朝の展開も晴れるってもんです。

　「今日もいい朝だね。すっきり晴れてるし」

　「そうだねえ、気分もウキウキさ」

　「ふふ、相変わらず楽しそうでわたしも楽しい気分。あーあ、同じクラスだったら良かったね」

　　高見さんは残念そうにゆっくり息を吐いた。うーん、その姿もキュートでっす。

　「あっ、もう時間だね。木城くんまたね～♪」

　「うん、またね～♪」

　　ぶんぶん手を振って見送る。

　「よう、みつふさン。青春真っ盛りかい」

　「盛りたいもんだねえ」
　

　　休み時間、教室前にて。

　「おやおや、これはこれは依頼人の木城君では無いですか。今日も相変わらず怪しい足元の濡れ具合で

　すねえ。察する所、三丁目の石田さん宅前のトラップに引っかかりましたね。いやはや、何とも怪しい

　靴下の蒸れ具合で」

　「相変わらずだなあ、溝口」

　　相も変わらず眼鏡の奥がきらりと光る。

　　何でもコンタクトと眼鏡の重ね着らしい。そりゃ光るわなあ。

　「ふふふ、その視線も微妙な怪しさを感じますよ・・。ほんのりと蔑んでますね、さては」

　「そんな事無いってえ」

　「その手の振り加減がおばちゃん並の時は概ね嘘付いてますね。いやあ、怪しい怪しい」

　　変に鋭い男も嫌われがちだぞ、溝口よ。

　「ともあれ、調査結果はレポートにまとめて提出いたしますのでお楽しみに」

　「ああ、はいはい」

　　そういや変な依頼してたんだよなあ。その依頼の方が俺より明らかに怪しいって。

　「みつふさン、たかしン。共にお手洗いへと勤しもうではないか」

　「そうだな」

　「そうですね」
　

　　昼休み、食堂内にて。

　「おっ、珍しいな木城。今日はこっちか？」

　「ああ、真弓。いつも屋上でも飽きるからなあ、たまには気分を変えないと。それが幸せな人生を送る

　コツさあ」

　「はは、お前に幸せを語られてもな」

　　真弓はいつも通りに爽やかに笑う。

　　この嫌味の無いさっぱりさがこいつの売りだよなあ。うんうん、良い子だねえ。変人だらけのこの学

　校の中にあってまさしく心のオアシスだよ。

　「何涙ぐんでるんだ、木城？」

　「ありがとう、ありがとう真弓・・・」

　「なッ！？一体どうしたんだ。今日はいつにもまして変だぞ・・・」

　「真弓ッ」

　「えっ、ああじゃあ私は行くよ」

　　すたこら翔ける真弓。いやあ軽やか～♪

　　フフフ、抱き付くと思ったかい。

　「ぷはあ・・・」

　「ありゃ、速いな赤司」

　「ふふふ、食こそ人類の真理なり。しかしてただの栄養補給に時間をかけるべからず。さあ、遊びまく

　ろう、みつふさン」

　「ちょちょっと待てよ、まだ麺が・・・」

　　こいつが静かなのは食べてる時だけかあ・・・。しかも異常に食うの速いし。おかげでうどん一杯３

　分で食えるようになってしまったし・・・。当然の如く入れ過ぎた七味唐辛子で激辛であるし。

　「さあ、我らが休み時間が待ってるぞ。レッツビギン、ハリーアップ！！」

　「ご飯だったら窒息してる所だぞ、まったく」
　

　　放課後、教室内にて。

　「フフフ、褌総クン。今日も二人で楽しい一日だったね」

　「ええっと、まあそうかなあ」

　「フフ、何でも二人でやると楽しいのよ。そうなのよ・・・だから・・だからずっと二人で・・・ウフ

　フフフ。無人島で愛を深め合う二人・・・見詰め合って・・、キャッ！」

　　えーと、もしもーし。こちらも相変わらずな、めぐタンで。いやあ、楽しい楽しい・・・・楽しいさッ！！

　「めぐタン？めぐタン？」

　「そう、そして愛し合う二人は情熱の愛のフェニックスとなって、夜空に永遠に光り輝く星たちのよう

　に熱く燃え輝くのよッ・・・。うふふ、ウフフフフフフ」

　　そしていつも通りに後ずさりながらゆっくりと離れる。刺激を与えては危険だ。綺麗にはけるのだ。

　　しかし皆慣れて来てるなあ。誰も見向きもしない。馴れってすご怖いね。

　「おおう、マイフレンドみつふさン。では今日も共に親交を暖めん」

　「ああ、はいはい」
　

　　帰宅後、自室にて。

　「おーい、褌総電話だぞ」

　　階下から父の呼び声。さっさと行かねば父の逆鱗に触れる。はよせなはよせな。

　「おう、褌総。あれだ、あの例のあれ」

　「ほーい」

　　まさしくあれだな、いつものあれだと父はぶつぶつと居間へ戻る。

　「もしもし」

　「グッ、イブニンみつふさン。あいらンとはよろしくやったかね」

　「ああ、いつも通りやって来たよ」

　「そりゃ、ご苦労さん。じゃあシーユー・・・・。ツー、ツー、ツー」

　　いつもながら速い用件のみな電話だこと。まあ、結構義理堅い奴だからなあ。よく忘れるくせに確認

　だけはするから、余計に訳が解らなかったりもする。まあ、確かに後からよくよく考えて思い返すと合

　間にぼそりと言ってるから始末に悪い。奴にとっては伝えるとただ言うのが同意語らしい。

　「褌総、おやすみ」

　「おやすみ、父さん」

　　父は早寝早起きなのだ。

　「さーて、明日はあれをあれするかあ・・・」

　　欠伸交じりにまた謎な事を・・・。僕は神経質でなくって良かったよ、父よ。

　　そうして日々暮れていく訳ですよ。

　　さて、明日も頑張ろう。　

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